4月3~4日にかけて日本付近を通過した猛烈低気圧の影響で、早咲きの桜が一部散ってしまったものの、東京では4月7~8日・14~15日の週末が、今年のお花見のピークとなりそうだ。
昨年は震災直後で、花見は自粛か? やるべきか? と意見が分かれた中、「このままでは経済的な二次被害を招いてしまう。自粛していただくよりも、お花見をしていただくことで、東北を応援してほしい」といったメッセージを発して、自粛ムードを一掃した「ハナサケ!ニッポンの会」。今年は「支援に対する感謝の気持ち」を形にしたオリジナルカップ酒『ハナサケニッポン花見酒』を販売中だ。
あさ開・月の輪酒造・南部美人・榮川酒造と4種類のカップ酒があり、3月26日から一部販売をスタート。『榮川酒造 本醸造』が1本300円、あさ開・月の輪酒造・南部美人の3本セット(1000円)は、東京でのイベント販売で500セット/1500本完売しており、岩手県内ではJR東日本が取り扱い盛岡駅などの売店や岩手・福島を中心とした全国の酒販店などで購入可能。また楽天市場「あさびらき11代目源三屋」でも販売を開始し、4月4日現在で1300セットの売れ行きだという。
それぞれのパッケージの背面には、各蔵元からの直筆の「感謝のお手紙」がプリントされていて、“感謝の気持ちを伝えたい”という想いが込められている。今回の取り組みにも参加している、南部美人の専務・久慈浩介さんはこう語る。
「YouTubeに出て、多くの方々から応援メッセージをもらってとても励みになりました。それまで、もうダメだと力を落としていた仲間たちも、みなさんの“応援消費”で、やってみよう! がんばろう! という気持ちになれたんです。
確かに、震災直後は再開を諦めかけた仲間もいた。でも全国から応援の声が届き、お酒の注文も入ってきた。それで、『飲んでもらえるんだ。よしやろう』という気持ちになれたんですよ」
その一方で、被災地の復興は地域によってもバラつきがあり、完全な復興というにはまだまだ時間がかかる。支援を受けた蔵元たちは自らが「より被害の大きな方々」への支援を行なっており、今回のこの商品の収益の一部も日本酒造組合中央会様を通じて、いまだ復興半ばにある地域への義援金になる予定だ。
「福島では蔵を津波で流され、原発事故で避難を余儀なくされた仲間もいます。たとえば、福島県浪江の鈴木酒造の鈴木大介は僕の大学の同級生です。彼のところは津波ですべてを流されたばかりか、原発事故で避難を余儀なくされた。それでもあきらめないで、大学時代の先輩が後を継いでいた福島県南会津町の酒造会社から醸造タンクを1本貸してもらって、『磐城壽(いわきことぶき)』の生産をはじめました。
彼自身、ひょっとすると生きているうちに故郷には帰れないかもしれない。それは覚悟している。でも、100年を超す伝統をもつ『磐城壽』をつくり続け、子供たちの代には地元に戻れる日が来ることを信じて、酒を造り続けている。
YouTubeでは僕が目立つ形になりましたが、ほんとうはそんな仲間たちの前向きな生き方に背中を押してもらっているんです。彼らを見ていると、何かせずにはいられない。震災前までは、まず自分の会社のことを考えていましたが、僕自身変わったと思います」(久慈さん)
「ハナサケ!ニッポンの会」だけでなく、「LIGHT UP NIPPON」や「Save The東北の酒」、「復興デパートメント」など、プロジェクトの多くは“継続的な支援が必要”という姿勢で活動を続けている。
“最近、東北産のものを買ってないな”という人も、“なるべく東北のものを買って、支援を続けているよ!”という人も、お花見の買い出しの際には改めて、復興支援に繋がるものを意識してみてはいかがだろうか。