今年就任したプロ野球の新監督は、ファンからすれば、突っ込みどころのある人選が多いようだ。ファンのツイッター上の意見は、新監督に手厳しいものが多い。
解説者時代、「気合い」ばかりを強調していた横浜DeNAの中畑清監督には「気合いだけじゃ勝てない」、コーチ経験なしからいきなり抜擢された日本ハムの栗山英樹監督には「おまえに何ができるんだ」、8年で4度の優勝を果たした落合博満氏の後を受け継ぐ中日の高木守道監督には「なんでおまえが監督なんだ」……。
そのなかで、人気球団であるはずの阪神・和田豊新監督に対しては、ここまであまり手厳しい突っ込みが目立っていないようだ。
現役時代は『2番・セカンド』として、打率3割を5度記録。ベストナインにも2度輝いた名選手で、引退後は打撃コーチとしての手腕も高く評価されている。ファンにとっても、突っ込みどころがないように見えるのだろうか。今年の『選手名鑑』(ベースボールマガジン社)を見ても、『趣味:ゴルフ』とありがちな答えだ。
だが、現役時代は違った。ルーキーイヤーだった1985年の『選手名鑑』(日刊スポーツグラフ特別号)を見ると、『趣味:ビデオ映画の収集(ただしポルノ以外)』と書かれていた。
カッコ内をわざわざ明記する必要はない気もするが、和田も同じことを考えたのか、翌年以降は『趣味:ビデオ映画の収集』となり、『(ただしポルノ以外)』の文字は消えていた。スポーツ紙のベテラン野球担当記者は、苦笑しながらその背景を分析する。
「当時、セルビデオは数千円を出さなければ買えない高価なモノで、1万円を超えるビデオも珍しくない時代でした。勘違いされないために、わざわざ『(ただしポルノ以外)』と明記したのではないでしょうか(笑い)」
この細やかな気配りに見られるように、現役時代の和田はバントに、エンドランに、右打ちに2番打者として適材適所な働きを見せた。『趣味:ビデオ映画の収集(ただしポルノ以外)』に見られる全方位に注意を払う性格は、常に俯瞰した目を求められる監督業にも良い影響を与えるかもしれない。