内閣府が設けた有識者検討会『南海トラフの巨大地震モデル検討会』は3月31日、東海や東南海、南海エリアで100~150年おきに繰り返し発生するとされるM8級の巨大地震・南海トラフについて、その被害予測を公表した。海洋で発生するこの地震の被害は揺れだけにとどまらず、大規模な津波が懸念される。
津波被害を考えるうえで忘れてはいけないのが、静岡県御前崎市にある中部電力浜岡原子力発電所の存在だ。
公表された浜岡原発周辺で想定される最大震度は7。津波の高さは21メートルとされている。
菅直人・前首相の要請により、2011年5月14日に原子炉は稼働を停止しているが、再稼働に向け津波対策を着々と行ってきた。しかし、現在建設中の防波壁は18メートルだ。
「南海トラフの巨大地震モデル検討会」の委員を務めた関西学院大学・室崎益輝教授(都市防災工学)は次のように話す。
「いまの堤防では当然最悪のケースは防げません。津波がはいってこないように、より巨大な堤防を作るなどの対応に迫られることでしょう。それだけこれまでの想定が甘かったということです」
現在、運転停止中の原子炉だが、地震と津波に襲われたときの危険性は稼働中と大きく変わることはない。京都大学大学院・小出裕章助教(原子力工学)は、浜岡が「第2の福島」になる可能性をこう指摘する。
「稼働していなくても、核燃料は絶えず冷やし続けなければなりません。いま燃料は使用済み燃料プールにはいっていると思いますが、低温を維持するための循環装置が地震や津波によって破壊されてしまえば、再び核燃料の温度は上がり、メルトダウンしてしまう危険性がある。福島原発の2号機がまさに同じような状況でした。
しかも、東京と浜岡原発は約188キロメートルしか離れていません。福島原発よりも20キロメートルも東京に近い浜岡原発で同様の事故が起きてしまえば、東京中が放射能汚染の大パニックに見舞われることになりかねません」
福島原発の事故によって、首都圏は水道水、土壌、はたまた母乳からも放射性物質が検出された。東京ではコンビニから飲料水が消え、子供を屋外で遊ばせない家庭も多かった。西風が吹く日本列島では、浜岡原発から発生する死の灰は関東地方に降りそそぐ。福島よりも近い浜岡で同様の事故が起きれば、より大きな騒動になるのは必至だ。
また、首都圏に限らず、名古屋市や大阪市など大都市にも近い距離に存在することも問題だ。東西をつなぐ幹線道路や東海道新幹線も近くを走っているため、日本中がパニックになることも。
※女性セブン2012年4月19日号