いま注目を集めている金融商品が「バイナリーオプション」。FX(外国為替証拠金取引)と同じく為替に投資するものだが、いったいどんなものなのか? 為替アナリストの陳満咲杜氏が解説する。
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2011年来、さまざまなFX会社が参入し、個人投資家の注目度が上がっている『バイナリーオプション』。その理由は、取引内容が単純で、分かりやすいということに尽きる。
提供するFX会社によって商品内容に違いはあるが、基本的には、一定時間後の為替相場で、選んだ通貨が上がっているのか、下がっているのかを予想するだけ。投資に必要な資金は50円、100円といったワンコインからOKで、予想が的中すれば投資金額が数倍になって戻ってくるし(倍率は会社によって異なる)、外れれば投資金額=損失額になるという、極めてシンプルなものだ。
もともとオプションは、金融派生商品の一種で、プロの機関投資家しか取引しないような複雑な金融商品である。しかし、資産運用の本として世界的なベストセラーとなった『金持ち父さん貧乏父さん』の著書ロバート・キヨサキ氏は、「現在の金融市場のように変動の激しい時代では、従来の投資セオリーである“バイ&ホールド”は通用しない」という理由から、オプションによる運用の必要性を説いており、世界的に注目度は上昇しているといえる。
国内のFX会社が取り扱うバイナリーオプションは、キヨサキ氏が注目しているオプションとは中身がかなり違っているが、投資期間が決められている点や、リスクやリターンを限定することができる点は変わらない。よりゲーム性が強調されているところが大きな特徴だ。
そもそも、「バイナリー」(Binary)とは「二進法」という意味。二進法には「0」か「1」しかないことから、バイナリーオプションには「二者択一」という意味が込められている。つまり、円相場なら、円高か円安かを予想するだけなのだ。
バイナリーオプションはFXで必要な証拠金は必要なく、投資金額も小さくて済む。そして、注文後、決められた時間が来ると取引が終了するため、FXのように反対売買をする必要がない。つまり、利益確定や損切りは自動的に行なわれるので、利益確定や損切りが苦手な人でも利益を出せる可能性が高くなる。
また、たとえ1銭でも通貨が予想方向に動けば、投資金額が2倍になることもあり、FXより投資効率は高いといえるだろう。
一方、予想が外れても、投資金額=損失となるためリスクは限定される。現在、FXのレバレッジは最高で25倍。資金を倍にするには、相場が予想通りに大きく動かないと難しい。バイナリーオプションが人気を集めている背景には、こうした要因もあるのだろう。
FXと比べたデメリットとしては、相場が予想とは反対方向に動いたときにすぐに損切りをして損失を最小に抑える、あるいは、しばらくホールドして利益を伸ばす、といったポジションのコントロールができないことが挙げられる。
バイナリーオプションは二者択一で勝負が決まるため、一部ではそのギャンブル性の高さをネガティブにとらえる向きもある。しかし、ギャンブルと割り切るなら、最も効率の良いギャンブルといえそうだ。競馬や競輪などの公営ギャンブルの控除率(手数料の割合)は20%台、宝くじにいたっては55%。これに対してバイナリーオプションでFX会社が得る手数料は数パーセントに過ぎないはずだ。
為替相場の知識がなく、ギャンブルとしてやっても50%近い勝率が見込める。それなら、知識を身に付けてトライすれば勝率は50%以上になり、資産運用のツールとして十分活用することができるだろう。
※マネーポスト2012年春号