“優等生”っぽくて信頼できる半面で、古くさくて退屈なイメージがあったNHK。でも、最近なんだか面白いと評判になっている。朝の情報番組『あさイチ』やドラマ『セカンドバージン』など、ジャンルを問わず、NHKの中からは新しい芽が続々と出始めている。
放送評論家の松尾羊一さんが指摘する。
「昔は政治や経済など報道のイメージが強かったけれど、いまは編成を見ても、娯楽や教養、教育などの面が強くなっていますね」
NHKは2004年に番組制作費・経費の不正支出や着服・横領といった不祥事が相次ぎ、全職員が職務を全うする旨、誓約書を提出するに至った。さらに2008年1月には報道記者ら3人のインサイダー取引疑惑が発覚。その後、2009年度から始まった3か年の中期計画で、ふたつの経営目標を打ち出した。
ひとつはテレビやラジオ、インターネットも含めて1週間に5分以上NHKを見たり聞いたりした人の割合を示す「接触者率」を76%から80%に高めること。もうひとつは、相次ぐ不祥事への批判から2008年度末には71.7%まで落ち込んでいた受信料の「支払い率」を11年度末に75%、2013年度末には78%にすることだった。
また、経営計画では「2012年度から受信料収入の10%還元を実行する」とした。今年10月から受信料が70~120円値下げされることになったのも、このときの方針によるものだ。
この経営計画のキャッチフレーズは「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」。“身近に”というのは、『あさイチ』が成功した理由とぴったりと重なる。
そして「接触者率」を高めるという目標は、視聴率アップを目指すことに直結する。前出の松尾さんがいう。
「民放が使っている吉本興業の芸人をいろいろな番組に登場させるなど、民放のやり方を積極的に取り入れるようになった。NHKのOBや知的階層からは“何をやっているんだ”という批判もありますが、視聴率を取るんだという姿勢が見える。それがいいかどうかは別として、NHKの意欲というか、元気のよさは民放よりも断然目立っています」
つまりはそれまで、“親方日の丸”的体質の上にあぐらをかいてきた局員が、民放との競争意識に改めて目覚めさせられたということだろう。
※女性セブン2012年4月19日号