3月31日、文部科学省が新たに発表した首都直下型地震による震度分布図。そこには震度7という激震の恐れがある地域が公にされたが同じ日、新たにこんなデータが発表された。対象となるのは、東海や東南海、南海エリアで100~150年おきに繰り返し発生するとされるM8級の巨大地震・南海トラフ地震だ。
30年以内の発生確率が東海で88%、東南海で70%、南海で60%というこの大地震の想定が大きく改められた。
2003年に推計した際は、震度7のエリアは7県35市町村、約300kmとされていたが、今回20倍以上の約7000kmと拡大。静岡、愛知、高知、宮崎など10県153市町村に及ぶ。
さらに、海洋で発生する南海トラフ地震の被害は揺れだけにとどまらない。地震後に襲う津波高は高知県黒潮町で34.4mをはじめ、静岡県南伊豆町で25.3m、三重県尾鷲市で24.5mと太平洋沿岸部一帯で10mを超えるという。
推計を発表した内閣府が設けた有識者検討会「南海トラフの巨大地震モデル検討会」の委員を務めた関西学院大学・室崎益輝教授(都市防災工学)は新想定の経緯をこう説明する。
「東日本大震災を契機に、最悪のシナリオを考えようと、起こりうる最悪のケース、最悪の条件を重ね合わせて推計しました。もちろんこれは最悪のシナリオですから、800年から1000年に1回起きるかどうかというもの。だからといって1000年後に起きるのではなく、明日起きるかもしれない。“堤防があるから大丈夫”ではなく、どんな堤防でも壊れることがあると考え、避難対策についても考えてほしいと思っています」
東京都では、津波は高くても中央区の2.3mが最大と推計されているが、これについても私たちは考えを改めなくてはならない。
名古屋大学大学院工学研究科・川崎浩司准教授(海洋工学)が説明する。
「東京湾の入り口は狭くなっているので、たとえ津波が来ても波の高さや速度は小さくなります。ただし、発生時2m程度の津波だったとしても、何度も押し寄せ遡上するうちに、思わぬ高さになることもある。東京や千葉は海抜が低いうえに、船橋の三番瀬など防波堤がない干潟も存在する。都内沿岸部では1m程度の浸水、千葉や神奈川の沿岸部では3m程度の浸水被害は考えなければいけません」
※女性セブン2012年4月19日号