世の活気とともに日本を駆け巡った雄姿も今は昔、役割を全うして、あるいは志半ばで命を失い打ち棄てられ、周囲の景色に同化していった廃車車両――。
約100両の美しき鉄道廃車体とその現役時代の写真を多数掲載した写真集『眠る鉄道 SLEEPING BEAUTY』(小学館、4月27日頃発売)の著者である写真家の丸田祥三氏は、廃車車両は「人々の楽しい思い出と、負の記憶を抱え黙し続ける姿」だと語る。
そのひとつが、東京都国分寺市で撮影された「旧国鉄・新幹線0系電車(21形37号)」だ。
1964年に誕生した初代新幹線は「夢の超特急」と称された。初期車は、高度経済成長期が終わった1976年頃から廃車が始まった。同車両は、国分寺にあった国鉄中央鉄道学園で教習車として使用されたが、1987年同学園の閉鎖により37号は跡地に取り残された。
「そして世がバブル期を迎えた頃、その車両もひっそりと朽ち果て、姿を消したようです」(丸田氏)
撮影■丸田祥三
※週刊ポスト2012年4月20日号