「税金? 払うわけないじゃん。だって、そもそも俺ここに住んでないもん」
平気な顔で笑うのは、都内の2LDKの公営団地で妻子と生活している田中佑司氏(仮名・47歳)だ。彼は3年前まで暮らしていた九州からいまだに住民票を移していない。住民登録もしていないので、都民税等の督促も来ない。
彼は、母娘家庭の「内縁の夫」という立場だ。シングルマザーだった今の妻と知り合ったのは7年前だが、現在にいたるまで籍を入れない理由は「いろいろ得だから」だという。
「カミさんは身体が弱くてあまり働けないということで生活保護を受けている。だから飲みに行く時なんかはそこから小遣いもらってるよ。うちは税金や保険料なんかは一切払ってない。こういうのがないと生活はかなり助かるよ」(田中氏)
まるでうまく節約をしているかのように誇らしげに語るが、一家は決して貧しいわけではない。田中氏は友人の紹介でイベントの下請け業を営み、妻も生活保護の手前、「無職」ということになっているが、実際は知人のスナックで週2~3日バイトしている。ふたりとも報酬は現金日払いで受け取っている。唯一、今の生活で不便を感じるのは、田中氏名義の国民健康保険証がないことだが、
「風邪を引いた時は謝礼を払って知り合いの保険証を使わせてもらう」(田中氏)
いま、公的な支払いを拒否する人々が急増している。定期的な収入もあるし、家賃を払い、時には嗜好品や娯楽にもカネを費やすが、税金や公共サービスに対する負担はしたくないと踏み倒す。
※週刊ポスト2012年4月20日号