第84回選抜野球はこの男の大会だった。優勝した大阪桐蔭高の大エース、“浪速のダルビッシュ”こと藤浪晋太郎だ。史上最長身197cmの藤浪は、とにかく幼少期から規格外だった。
「2歳から成長痛が始まりました。腕がどんどん伸びていく感じがして、痛かったからよく覚えています。なぜ大きくなったか? 小さな頃からよく寝たからだと思います(笑い)。外出禁止の選抜期間中も宿舎でずっと寝ていました」(藤浪)
小学校卒業のころにはもう180cm。短期間にすくすく伸びていき高校入学時には現在の身長に達していた。母・明美さん(47)が振り返る。
「背が大きいこと以外、他の同年代の子供たちより飛び抜けたところは特になかったです。野球に関しても、うまくなったと思ったら身長が伸びたことで投球のバランスを崩して苦労していました。負けず嫌いな子供でしたけど、ほとんど涙を見せたことがなかった。だから、去年の夏に大阪大会決勝で負けて号泣した姿を見たのは、家族にとっては衝撃的なことでした」
松井秀喜らを育てた星稜高校野球部元監督の山下智茂氏は、「これまでの高校球児にはないスケールで将来が楽しみ」と語る。
「ただし、投球の際に頭を大きく振る癖がある。腹筋と背筋を鍛えてそこを修正すれば制球がさらに安定するだろうし、上のレベルでも花開く可能性がある」(山下氏)
※週刊ポスト2012年4月20日号