社団法人ペットフード協会の平成23年度全国犬・猫飼育実態調査によれば、全国の推計飼育頭数は犬1194万頭、猫961万頭に上るという。
一方、農林水産省が実施する飼育動物診療施設の開設届出状況によると、犬猫を含む小動物診療施設の開業数は平成21年が1万135、同22年が1万350。ほぼ横ばいの推移であることから、新規開業数とほぼ同じ数の獣医院が廃業していると推測される。
理由のひとつが競争の激化。特に首都圏の動物病院は飽和状態といわれており、これだけ数が多いと、飼い主は何を基準に動物病院を選んだらいいのか迷ってしまう。
『頼れる動物病院ガイド』(オクムラ書店刊)の著者、愛玩動物飼養管理士で東京都動物愛護推進員の柿川鮎子さんは、動物病院を選ぶ基準について、「飼い主にとって、信頼できる病院であるかを見極めることが大切」と話す。
柿川さんは、動物病院に事務職員として勤務していた経験があり、その際、獣医師と飼い主のコミュニケーション不足を痛感したという。
「ペットを治してあげたい思いは同じなのに、コミュニケーションが足りないせいで、“こんなに治療費が高いとは思わなかった”、“ほかに治療法があるなら、なぜ事前に教えてくれなかったのか”と飼い主に不信感が生まれることがある。これは獣医師にとっても飼い主にとっても不幸なことです」
つまり、よい病院とは獣医師と飼い主がしっかりコミュニケーションを取れている病院だといえそうだ。
「話し合いのうえ、納得がいく治療法を選択できれば、治療の結果、ペットが亡くなってしまっても飼い主は悔いを多く残さずにすみます」(柿川さん)
兵藤動物病院(神奈川県横浜市)獣医師の兵藤哲夫さんは次のように指摘する。
「クレーマーのような飼い主がいるのも事実ですが、獣医師が、飼い主に対して納得できる説明をできていないケースも多い。よい獣医師なら、ペットの病歴や日ごろの食欲、体調など、飼い主の言葉にしっかり耳を傾けたうえで診断を下し、治療方針をわかりやすく説明することができるはずです」
柿川さんは、ペットもかかりつけ医=ホームドクターを持つべきだという。
「大きな病気やケガをしてから慌てて病院を探したのでは、そのペットに最適な診断が下せない場合もあります。健康診断や予防、しつけの相談などでふだんから動物病院とつきあっておくことが重要です。獣医師がペットの体質や性格のほか、飼い主のペットに対する思いや飼い方の方針を充分に把握できていれば、病気を早期に発見できるだけでなく、病気にかかったときの治療法も適切に提案・選択できるのですから」(柿川さん)
※女性セブン2012年4月19日号