数年前から社会問題となっている「給食費未納者」。今のように未納が増えたのには、「きっかけ」があったという。
「2004年に、給食費を学校ではなく市が徴収することになって、口座振替に変えた。それから滞納が増えたんです。給食袋で子供たちが持ってきた頃は、先生の目、同級生の目があって滞納が少なかった。
それが市と直接やりとりすることになると、他人の目を気にする必要がなくなったんでしょうね。訪問すると、“申し訳ない、返したい”といった話は一応するんです。だから返済するのかと思えばしない。その場だけ、のらりくらりとかわし、最後には居留守を使うようになる」
自治体ではなく学校が徴収する場合には、このような保護者と対峙する役目は原則、担任教師が負わされる。東東京の公立中学で教壇に立つ溝口かおりさん(仮名・32歳)は、この徴収業務がトラウマになったと告白する。
「教育扶助を受けているにもかかわらず、給食費や教材費を払わない親御さんもいた。扶助がおりると親が飲み食いやパチンコに使ってしまうようなので、家庭訪問の時に、お子さんのためにも学校振り込みにしてもらえませんかと切り出した。
そうしたらお父さんが突然キレました。教材や体操着を投げつけてきて、“こんなもん頼んでもいないのに勝手に買わせやがって”と怒鳴られて、本当に殺されるんじゃないかと思いました。学校側とも相談して、そのご家庭には、もう給食費のことは触れないことになりました」
※週刊ポスト2012年4月20日号