低迷する日本企業と、業績を伸ばす欧米企業。差がどこでついているかといえば「海外」だ。大前研一氏によれば、日本企業は海外に進出していても、日本国内ほどきめ細かく取り組んでいない。古い「輸出モデル」から抜け出せていないというのだ。以下は、大前氏の指摘である。
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かつて日本のチャンピオン企業は日本とともに世界でも伸びた。だが、今は日本市場が衰退しているため、国内チャンピオンのまま日本とともに沈んでいる。
一方、欧米の同業者は自国のマーケットが低迷していても、成長している新興国のマーケットに進出して業績を伸ばしている。
たとえば、トイレタリー業界で、日本国内トップのエクセレントカンパニーの花王と世界一のアメリカのP&Gを比べると、売上高は1兆2000億円と6兆4000億円、営業利益率は8.8%と19.2%だが、時価総額では1兆1000億円と13兆8000億円という10倍以上の大差がついている。
食品業界でも、日本国内トップの味の素と世界一のスイスのネスレでは、売上高が1兆2000億円と9兆3000億円、営業利益率が5.7%と14.8%だが、時価総額が6800億円と14兆9000億円と20倍以上の開きがある。
これほどの差がどこでついているかといえば「海外」だ。海外売上高比率が花王は23.6%、味の素は33.5%にすぎないが、P&Gは59.0%、ネスレは92.3%を占めている。
要するに、日本企業は海外に進出していても、日本国内ほどきめ細かく取り組んでいないのだ。また、国内の圧倒的市場占有率で上げた利益を海外に注入する、という古い「輸出モデル」から抜け出せていない。
これまでは日本が世界第2位の経済大国で人口も1億2700万人いるから、そこに安住していたのである。
では、これから日本企業はどうすればよいのか? 将来有望な市場を持っている新興国を5つなら5つ選んで狙いを定め、日本の国内市場と同じように、あるいはかつてアメリカ市場を開拓したように、きめ細かく必死に取り組めばよいのである。
その場合、決して地域単位で選んではいけない。最もやってはいけないことは、東南アジアを統括するエリアマネージャーがシンガポールに駐在し、その下にタイやベトナム、インドネシアなどのカントリーマネージャがいる、というやり方だ。
そうではなくて一番優秀な人材を一番重要な国に、二番目に優秀な人材を二番目に重要な国に長期にわたって埋め込まなくてはいけない。
その人材は日本人でなくてもかまわない。ただし、人を選んだら現地に任せ、普通は20年、最低でも15年は待つ必要がある。実際、インドネシアの大塚製薬(ポカリスエット)やマンダム(化粧品)、ベトナムの東洋水産(インスタントラーメン)など、海外で成功している事例は例外なく現地に長期間、1人のキーパーソンがいる。
その人が現地に溶け込んで自ら辛抱強く綿密な市場調査を行ない、販路を拡大しているのだ。そういう土着型の組織が出来上がってしまえば、その後は国内営業と同じように本部長を代えてもうまくいくケースが出てくる。
※週刊ポスト2012年4月20日号