いつ訪れるかわからない、親の死…。そして、実際にそうなったときに、家族の中で問題となりかねないのが遺産相続だ。ここでこんなケースがある。
「兄(45才)と妹(39才)の兄妹です。母は他界、2年前に寝たきりになった父の介護を私がしています。兄は気楽な独身暮らしで、父の面倒は一切みてくれません。父の財産は介護をしている私が多く相続すべきだと思うのですが?」
この相談に、キーストーン法律事務所・弁護士の黒澤計男さんが回答する。
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法定相続人が兄妹2人だけの場合、財産は兄・妹とも2分の1ずつ。しかし、介護をしているあなたが多く相続すべきと感じるのであれば、お父さんが元気なうちに、遺言書を書いてもらうのがいちばんいい方法でしょう。
ただ、このときお父さんの意向をお兄さんに伝え、同意を得ておくことが大切です。勝手に遺言書を書いたとお兄さんがへそを曲げれば、お父さんの死後、遺留分減殺請求(理不尽と感じる遺言書に対して“遺留分を侵害”されたとして行う請求)されるなどトラブルに発展することも考えられます。
遺言書を書いてもらうのが難しい場合、法定相続分を基準に各自の相続分を協議します。分割割合の話し合いであなたが多く相続することをお兄さんが認めてくれればそこで解決。
認めてくれない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、寄与分(特定の相続人が被相続人の財産の維持・増加に対して貢献したと主張できる“分け前”。その分け前を、分割する遺産から外し、貢献した相続人に還元する)を主張できます。家庭裁判所が寄与分を認めてくれれば相続分を増やせます。
調停でまとまらない場合は遺産分割審判に解決の場が移ります。しかし、審判になると「勤め先も辞め、給料ももらわず介護にかかりきりだった」など、客観的な基準をもとに寄与分を計算されるケースが多く、会社勤めをしながら介護をしていたのであれば、寄与分を認められる可能性は少なくなるでしょう。
遺言書を書いてもらうことを自分からいいだしにくいなら、お父さんが信頼する友人や親戚から、それとなくいってもらうといいかもしれません。
※女性セブン2012年4月26日号