エースやホームランバッターはいわば野球の「華」である。しかし、その陰に隠れながらも、コンクリートの裂け目にしっかりと根を下ろす雑草のように、球界を生き抜く男たちがいる。他の選手にはない己の個性“一芸”で、今季も彼らはスタンドを沸かす。
勝負のかかった重要な場面で代走として起用される選手を“代走屋”と呼ぶ。10年以上もそれを務めるのが巨人の鈴木尚広(33)だ。4月1日のヤクルト戦では、1点リードの8回に村田修一(31)の代走で出場。すかさず二盗を決め、貴重な追加点の立役者になった。かつて西武で二塁手として活躍した野球評論家・山崎裕之氏が語る。
「代走屋は、成功率うんぬんより、ここ一番で成功できるかどうかで価値が決まる。そういう意味で鈴木は原監督の信頼を得ています。俊足といわれる選手は多いが、リードのとり方、スタートの切り方でいえば現時点で右に出るものはない」
過去、楽天が何度もトレードを申し込んだが、巨人側は鈴木だけは出せないと断わった。
※週刊ポスト2012年4月20日号