桜前線が北上し、春らしい陽気に包まれた昼下がり。“きんさんぎんさん”で知られる蟹江ぎんさん(享年108歳)の四女・百合子さん(91才)が、風呂敷包みを抱えて蟹江家にやってきた。
「知り合いから貰った小豆があったでな。今朝は1時間ほど早起きして、久しぶりにこれぇ、こさえて(こしらえて)みた」
百合子さんが包みを開けると、顔を出したのは、餡がたっぷりまぶされた“ぼた餅(牡丹餅)”。
長女・年子さん(98才):「ひやぁ~っ、これはうまそうだにゃあ。そんなら、いただきまーす」
小皿に取り分けたぼた餅を、てんでにパクつき始める4姉妹。その顔が、ひとりでにほころんだ。
三女・千多代さん(94才):「このぼた餅のこと、“お萩”ともいうじゃろう。どう、違うんだろうか!?」
五女・美根代さん(89才):「あのね、これはな、春は“ぼた餅”、そいで秋は“お萩”っていうだが。ほら、このあんこの具合を、春は牡丹の花に見たて、秋は萩の花に重ね合わせてそういうだがね」
千多代さん:「へぇーっ、知らんかった。おみゃーさん、物知りだでねぇ(笑い)」
昼食をいただいて、まだ小一時間しかたたないというのに、姉妹たちは、たちまちぼた餅を3個ずつたいらげてしまった。
百合子さん:「こういううまいもんは、やっぱり、別腹だよね」
年子さん:「ほんと、別腹、べつばら……(笑い)。このごろな、朝起きると“ああ、そろそろこの世とおさらばしてもええ”って思うけど、こんなうまいもん、頂戴できるんなら、やっぱり、死にたくないと思うわねぇ(笑い)」
美根代さん:「まったくあんねぇ(年子さん)は、ゲンキンなんだから。そんなね、死にたい、死にたいっていう人ほどにゃあ、長生きするだでね、ハハハハハ」
ぼた餅を仲立ちに、姉妹談議は、いつの間にか“長生き論”に発展した。
※女性セブン2012年4月26日号