ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を展開する『メルマガNEWSポストセブン』。4月13日に配信された11号では、森永卓郎氏が郵政民営化見直しについて発信。ここでその一部を紹介する。
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自民・公明両党は、郵政民営化見直し法案の修正で合意した。最大の焦点だったゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式売却については、公明党がこれまで「早期にできるかぎり、多く処分する」と政府保有継続に含みを残す主張をしてきたのに対し、自民党は株式の完全処分を主張して調整が難航していた。結局、「全てを処分することを目指し、両社の経営状況等を勘案しつつ、できるだけ早期に処分する」とすることで両党が合意した。民主党もこの案を受け入れる見通しで、郵政民営化見直し法案は、今国会で成立する可能性が高くなった。小泉元首相が断行した郵政民営化の行き過ぎを是正する「郵政民営化の見直し」は、民主党マニフェストの主要政策であったにもかかわらず、またもや頓挫してしまったのだ。
もちろん今回の自公による修正案は、完全売却を努力義務にとどめているので、すぐに何かが起きるわけではない。だが、株式売却が進めば、大きな影響が出ることは間違いない。例えば、外資が大きなシェアを獲得すれば、必ず運用に口出しをしてくるだろう。
現在、10年満期の国債利回りは、アメリカが2.2%、日本は1.0%だ。一方、格付けはアメリカがAA+、日本がAA-だ。格付けが高くて、利回りの高い米国債での運用を提起されたら、それを止めるのはなかなか難しい。
もし、国債発行額の3分の1を保有する郵政金融2事業が、資産運用の中心を日本国債から米国債に移せば、日本の財政が危うくなってしまう。日本政府が大きな借金を抱えながらも、日本国債が暴落しない最大の原因は、国債発行額の92%を国内で消化できているからで、その国債の最大の受け入れ先が郵政金融2事業なのだ。
結局、郵政の完全民営化で幸せになるのは、日本国民に米国債を押しつけるアメリカだけなのかもしれない。