働き盛りの男性に多く発症する潰瘍性大腸炎は、腸管における過剰な炎症反応が原因である。治療にはステロイド剤や炎症を起こす物質の働きを抑えるTNF‐α拮抗薬が投与される。しかし内科治療で改善が困難な場合は、大腸全摘などの外科的治療を実施しなければならないこともある。
近年、免疫システムの過剰反応を抑制する物質による治療アプローチの研究も始まっている。なかでも注目されているのがプロテオグリカンだ。
弘前大学副学長で大学院医学研究科の中根明夫教授に話を聞いた。
「弘前大学では30年以上前から糖鎖の研究をしており、その中で特に糖とタンパク質の複合体であるプロテオグリカンに着目しました。この物質は細胞マトリックスを形成していて、保湿性にすぐれ、皮膚ではハリや弾力を保つ重要な成分です。
しかし、その抽出が難しく1グラム3000万円と高価で、医療・美容分野への応用は難しいと思われていたのですが、本学では青森県特産の鮭の頭から、安全で安価に抽出することに成功したのです」
プロテオグリカンの機能についての研究の一環として、がんや感染症、免疫などへのアプローチが行なわれた結果、プロテオグリカンに免疫抑制効果があることが判明した。
従来の糖類は免疫を活性化させる働きがあるが、免疫細胞(マクロファージ)を炎症誘導物質で刺激する際にプロテオグリカンを加えたところ、炎症性サイトカインの産生が抑制され、免疫を抑制するインターロイキン(IL)10の産生が促進されるというデータが得られ、本格的にメカニズムの解明が始まった。
(取材・構成 岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年4月20日号