アサヒビールは、10日、2月21日に新発売したビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』の出荷が累計販売箱数100万箱(大びん換算)を突破したことを発表。これから最盛期を迎えるにあたり、さらなる需要増が見込まれるため、同社は年間販売目標を当初計画の300万箱から400万箱へと上方修正することも明らかにした。
ノンアルコールビール市場は2009年頃から急速に成長しており、2010年にキリンの「フリー」のヒットで一気に活性化したといわれる。2011年にはサントリーの「オールフリー」がトップシェアを獲得したが、2012年2月には、アサヒが「ドライゼロ」で本格参戦すると、初期出荷効果もあり、2月単月で、すでに市場シェアトップに(東海東京調査センター)。同月にはサッポロも「プレミアムアルコールフリー」をリニューアルするなど、戦国時代に拍車がかかっているが、ノンアルコールビール市場が拡大し続ける理由と今後の見通しを、流通ジャーナリストの金子哲雄氏が分析する。
■ノンアルコールビール市場が拡大する理由
金子氏によると、ノンアルコールビール市場が拡大する理由は3つあるという。
「まず大きいのは飲酒運転の取り締まり強化ですね。明朝早くから仕事だからなど、飲みたくても飲めないという人たちの需要はかなり大きいです。2つ目は、高齢者層のヘルシー志向があります。
3つめは、若者世代においてお酒の飲み方を習う場がなくなったことでしょうね。余計な人間関係をつくるのはイヤだし、酔っ払ったオヤジの姿はかっこ悪いという意識もある。
そんな若者が、自分が一緒にいたいと思う人たちとの雰囲気を楽しみたい、飲んだ気になりたい、などの“飲み会気分”を味わうのに、アルコール度数はゼロでも、味や色が似ているノンアルコールビールを選ぶのは、非常に理にかなっているといえます。ビールを飲んでいる人もいる場では、より同じ気分を共有でき、会話がはずむのではないかという思いがあるためですね。同じ料理を食べる際にも、味がビールに似ているほうが有効だと思われます」
■メーカーの戦略は
「メーカーとしても、ビールの飲み方がわからない若者に対し、ソフトドリンクの延長でノンアルコールビールで慣れてもらって、次に発泡酒、ビールと段階的にアルコール度数が高いものに慣れてもらうというマーケティング戦略があるのではないでしょうか。
最近拡がっているという『街コン』などで飲み会の機会をつくるなど、若者の需要の拡大につながることを考えていると思います」(金子氏)