連続不審死事件で約100日に及ぶ法廷劇の末に死刑判決をいい渡された木嶋佳苗被告(37才)。身長は155cm程度。洋服のサイズは15号で、明らかに“太め”の部類にはいる。一般的にいえば、とてもモテるタイプとはいえないはずだが、一連の公判で彼女が見せつけたのは、あたかも“捕食者”のように男性を陥落させていったという、自信に満ちた態度だった。
一方、木嶋被告にも過去、強いコンプレックスがあったはずだと見るのは、太め女性恋愛応援カウンセリングを行っている羽林由鶴さんだ。
羽林さん自身、身長158cm、体重103kgという体形。離婚歴があり、子供もいる。にもかかわらず、1kgも痩せることなく、3年間で5人の男性からプロポーズされた経験を持つという。そのなかから彼女が再婚相手に選んだのは、13才年下の東大大学院卒の男性だった。
だから羽林さんは、木嶋被告が男性を手玉にとったことに、驚きを感じていない。
「多くの女性たちはウエストの1cmを必死で細くすることにこだわります。“男の人は外見重視で近づいてくる”と思い込んでいるからでしょう。でも、実際はそうじゃない。もちろん木嶋被告がモテる理由は容姿ではないけれど、外見はマイナスには働いていないんです」(羽林さん)
いったいどういうことか。
羽林さんは自らの経験に重ねて、木嶋被告の過去にこう思いを馳せるのだ。
「太っていると、幼稚園や保育園のころから、からかいやいじめの対象になりやすい。私は思春期のころがいちばんつらかった。太っている女性はそのつらい経験から抜け出せず、人間関係が極端になる人が多いんです。人とのかかわりを徹底的に避けたり、逆に“お笑いキャラじゃなきゃダメ”と思い込んで愛想をふりまいたり。木嶋被告も、そうしたコンプレックスと無縁ではなかったはずです」
女性は小さいころから否応なく、美醜の価値観のなかに放り込まれる。「そのお洋服かわいいね」という女友達との会話から始まり、自分の顔だちや体形を気にして、自ずと“美醜のヒエラルキー”に組み込まれていってしまう。
しかし、多くの女性はそのなかで“勝利”を実感することはできない。それゆえ、少しでも痩せよう、キレイになろうとすることが当たり前のように思うようになる。世の中にファッション雑誌があふれ、エステ業界が活況なのもそれゆえだと、羽林さんはいうのだ。
「私の場合、コンプレックスから前の夫に尽くしすぎ、それが夫のDVに発展してしまいました。でも、離婚した後に、残りの人生を“おまけ”と考えて、他人からの評価より、自分らしさを大事にするようになり、大きな変化が訪れました。男性と接するときも、自分の容姿や相手に気に入られることを考えないようにしたら、明るく話せるようになったんです」
それをきっかけに、羽林さんは男性からモテるようになったという。
撮影■浅野剛
※女性セブン2012年4月26日号