JALとANAが1月から2月にかけてそれぞれ発表した2012年3月期の連結業績見通しは実に対照的だった。売上高(営業収入)はJALが1兆1900億円、ANAが1兆4000億円で、JALがANAを2100億円上回ったが、世間に驚きを与えたのが「利益」の差だった。
営業利益はJAL1800億円に対してANA900億円。当期純利益ではJAL1600億円に対してANA200億円と実に8分の1。かつての「無駄の多いJAL、高収益体質のANA」という時代は、JALの破綻・再生を経て、数字の上では逆転している。
もっとも、この数字にANA関係者は大いに不満を持っている。
「2011年度第3四半期(昨年12月末)のJALの借入金は717億円だが(ANAは9473億円)、これは総額5200億円もの債権放棄を経てのもの。さらに資産には企業再生支援機構からの3500億円の出資金が含まれている。あえていわせてもらいますが、“ドーピング決算”ですよ」
この指摘はJALサイドも認めるところだが、「破綻以降、5万2000人の社員を3万1000人まで削減するなど、徹底的なリストラを実施した成果」(JAL広報部)との反論もある。
ただし、これもANAにいわせれば「破綻状態になったから3分の1もの人員カットができた。まともな民間企業であんなクビ斬りをしたら大問題です」(前出・ANA関係者)という嫌味混じりの再反論が聞こえてくる。
取材■前屋毅(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2012年4月27日号