最新鋭機B787の導入・運航開始、LCC(格安航空会社)の市場拡大など航空業界に大きなうねりが起きている中、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の経営戦略は対照的だという。ここではB787について解説する。
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最新鋭機として注目を集めている「ボーイング787(B787)」。中型機ながら燃費効率を高め、大型機並みの航続距離を誇る。
昨年9月、日本では1番機となるB787が納入された先はANAだった。ANAはローンチングカスタマー(立ち上げ顧客)として関わったことを前面に出してアピールし、国内では「B787といえばANA」という印象が強くなっている。
JAL関係者はこう反論する。
「開発にはJALも関わっていたのに、ANAの大宣伝にしてやられた。初期不良などのリスクが伴うので、経営再建中の当社にはANAと1番機を争うその余裕がなかったということです。しかし、4月22日のボストン便就航を皮切りに“JALのB787”をアピールしていきたい」
就航路線についても両社の方針は対照的だ。
「長い航続距離のメリットを活かすため、国際便でしか使わない」という方針のもと、ボストン、サンディエゴ、ヘルシンキへの就航を発表したJALに対して、ANAは国内便でも飛ばしている。
「客室内の静かさや気圧などの環境面で、B787は格段に優れています。それを一人でも多くのお客様に体感していただくために、国内便に投入しています」(広報室)
利用機会の多い国内線だけに「B787といえばANA」のイメージをJALが打破するには時間を要するかもしれない。
取材■前屋毅(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2012年4月27日号