ダルビッシュ有本人は「162分の1」を強調したが、6回途中まで投げ、5失点ながらも勝利投手になった彼にとっての本拠地デビュー戦は単なる1試合ではなかった。MLBアナリストの古内義明氏が、ダルビッシュのデビュー戦をリポートする。
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ダルビッシュの大リーグ初登板は、勝利こそ記録されたものの、内容的には散々なものだった。アメリカのメディアの反応も辛辣なものだった。中継したFOXテレビは「幸運なダル」と報じ、ESPN(電子版)は、「大騒ぎするのは少し待て、ダルビッシュのデビューは残念」というコラムを掲載した。
ダルは本拠地開幕戦について、「普通の登板の一つにすぎない」と強弁したが、過去の日本人選手のケースと重ね合わせると、単なる「162分の1」という位置付けでは決してないだろう。ホーム&アウェイが明確なメジャーでは、本拠地で鮮烈なデビューができるかどうかは、その後のプレーに大きな影響を与える。
“元祖・1億ドル男”の松坂大輔は、フェンウェイパークでのデビュー戦で0対3と黒星スタート。地元ファンを味方につけるのに時間がかかり、いまでは当たり前のようにブーイングを受ける。松井秀喜はヤンキースタジアムで、満塁本塁打デビューを飾った。後に、「あの本塁打があったからこそ、NYでプレーすることが本当に楽になった」と吐露している。
※週刊ポスト2012年4月27日号