大リーグ初登板で初勝利を果たしたダルビッシュ有。鳴り物入りで入団した彼にとって、デビュー戦のピッチング内容(6回途中・5失点で勝利投手)は納得のいかないものだったに違いないが、それは彼を見る周りにとっても同じことだ。MLBアナリストの古内義明氏は、“今後のダルビッシュ”についてリポートする。
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球団があまりダルビッシュを特別扱いし過ぎると、選手間で孤立を招く可能性も出てくる。日本人初の内野手としてメッツに入団した松井稼頭央は、期待に応えられるような成績を残せず、NYメディアから厳しく批判された。クラブハウスでは漫画本を読んだり、携帯ゲーム機で、一人で遊ぶ姿が度々目撃され、チーム内で孤立したことがあった。
レンジャーズがダルビッシュと交渉するためだけに支払った入札額は、2年前のチーム総年俸と同じ大金。すでに投手陣で3番目の高年俸プレーヤーだ。2年連続で世界一にあと一歩届かなかったレンジャーズは、悲願の世界一の「請負人」としてダルビッシュと契約した。だからこそ、チームメイトから確固たる信頼を得るには、早急に誰もが納得する結果を残すしか道はない。東北高校でダルビッシュを指導した若生正廣氏はダルビッシュをこう形容した。
「有は自分でこの人は信じられるって決めた人間のいうことしか聞かない子なんです。そして、いいと思ったことは徹底してやる男。クールに見えるかもしれませんが、本当は熱い人間なんですよ」
これから世間の注目は日増しに高まるばかりだが、
「環境が変わることが心配。特に食生活。そして、独身になったのだから女性との付き合いだって気を付けないといけない」
と、教え子に注文をつけることも忘れない。原点を思い返し、自らが掲げる「誰もが認める世界一の投手」になれるかどうか。その道程はまだ始まったばかりだ。
※週刊ポスト2012年4月27日号