台湾メーカーとの資本・業務提携を発表したシャープの奥田隆司・新社長は、自社の弱点について「マーケティングの弱さ。市場をよく分かっていないから良い商品をタイムリーに出せない」と分析していた。だが、それは違うと大前研一氏は指摘する。以下は大前氏の解説だ。
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シャープがEMS(電子機器の受託製造サービス)で世界最大手の台湾・鴻海精密工業との資本・業務提携を発表した。シャープが670億円の第三者割当増資を行ない、それを鴻海グループ4社が引き受けて議決権ベースで9.99%を持つ筆頭株主となる。
さらに、シャープが約93%を保有する堺工場の運営子会社の株式も半分の約46.5%分を660億円で鴻海精密工業の創業者・郭台銘氏に売却し、同工場で生産する液晶パネルの半分を鴻海側が引き取ることで工場の操業安定化とコスト競争力の強化を図るという。
これは事実上、「シャープは鴻海の下請けになります」という宣言にほかならない。
シャープの奥田隆司・新社長は自社の弱点について「マーケティングの弱さ。市場をよく分かっていないから良い商品をタイムリーに出せない」と分析していたが、それは違う。シャープの弱点はマーケティングではなく、商品そのものだ。
利益を出している競合他社は、商品やシステムで勝っている。たとえば、韓国のサムスン電子が儲けているのは、フラッシュメモリーとGALAXY(スマートフォン、タブレット端末)だ。薄型テレビで世界シェア1位のサムスンといえどもテレビ事業では利益を出していない。
シャープの本質的な問題は、利益の出ない液晶テレビを主力事業にしていること、GALAXYやアップルのiPhone、iPadに匹敵する商品を持っていないことなのだ。
※週刊ポスト2012年4月27日号