昨シーズンまでセ・リーグ4年連続最下位の横浜DeNAベイスターズは、今季もキャンプインからつまづいた。2日目に新監督の中畑がインフルエンザを発症し、続けて社長の池田純や、巨人から新加入した主砲のラミレスにまで蔓延した。
インフルエンザを患っても、中畑清は中畑清、常に元気ハツラツだった。
「熱もそれほど高くなく、『俺はこんなに元気なのに……』と中畑さんは悔しがっていました」
そう振り返るのは、監督担当広報の宮内洋(39)だ。中畑がキャンプを離脱し宿舎の部屋に隔離された4日間、主に彼はその中畑の部屋で過ごした。
そして、「横浜に誰がいるかも知らないし、過去に何があったかも知らない。無色透明な状態で臨む」と語っていた中畑に一言こう告げた。
「ちょうど良い機会だから、この療養中に選手の名前と顔をすべて覚えましょう」
キャンプインの段階では、中畑は選手の顔と名前が完全には一致していなかった。そんな中畑に対し、宮内は選手名鑑とにらめっこしながら、一人ひとりのプレースタイルや性格を伝えていった。さらに会社の状況や、不振が続いたここ数年のチームの足跡も。
宮内と二人きりで過ごした4日間を、中畑は次のように明かした。
「彼の仕事に対する意識の高さを実感しました。彼は編成部にもいたから、戦力も戦況もしっかり把握していた。私も療養明けには、一人ひとりの選手の名前を呼んであげることができて、円滑にコミュニケーションをとることができました」
●レポート/柳川悠二(ノンフィクション・ライター)
※週刊ポスト2012年4月27日号