元祖バイリンギャルとして知られた、タレントの山口美江さんが3月8日に自宅で亡くなっているのが発見された。51才、死因は心不全だった。2009年には女優の大原麗子さん(享年62)が、2008年にはタレントの飯島愛さん(享年36)が、それぞれひとり暮らしの自宅で死亡し、その後発見されている。
彼女たちに限らず、ひとりきりで亡くなって死後発見される“孤独死”の報道は昨今珍しくない。老人ホームに入居していても孤独死する事件があるほどだ。ノンフィクション作家の松原惇子さんはこう話す。
「物事には何事にも、いい面と悪い面がある。家族がいることや孤独死だって同じ。私は“ひとりで死ねるなんてすごく幸せ!”って思っています。だから私は孤独死ではなく“おひとり死”って呼んでいます。ひとりなら楽に死ねたかもしれないのに、家族がいたばっかりに病院を連れ回されることもある。ひとりで死ぬことが必ずしも悪いとはまったく思えません」
松原さんは、結婚、離婚、転職、留学などを経て39才で『女が家を買うとき』(文春文庫)で作家デビュー。『クロワッサン症候群』(同前)はベストセラーとなり、流行語にもなった。松原さん自身、64才になる現在もおひとりさまだ。1998年に女性ひとりの老後を応援する『SSSネットワーク』を立ち上げ、呼びかけに集まった約10人のメンバーは、いまや約1000人の大所帯となった。
SSSとは、S(シングル)、S(スマイル)、S(シニアライフ)のこと。同会は女性の自立支援や地位保全を目指し、家族の有無にかかわらずひとりで生きる女性を応援する。会員になると、仲間作りのためのイベントや災害時のネットワークに参加できるほか、共同墓を契約すれば“墓友”を得ることもできる。
墓友とは、一緒に墓にはいる友達のこと。家族がなくひとり暮らしの人たちが、同じ境遇の人と出会い、新しい縁を結ぶ。Googleでこの言葉を検索すると、2360万件がヒットする。
「最近の入会理由をみると、友達が欲しいって人ばっかり。みんな孤独なんですね」
辛辣でいて、どこか温かみのある口調で語る松原さん。
「40代からこの活動を始めたんですが、老後は差し迫ってないし、みんな楽しくやっていました。でも、最近はシビアな人が多いんです。“不安”とか“心配”とか、暗い会になってきた。それがすごく嫌なんです(笑)。共同墓も、ひとり暮らしだと自分のお墓のことが心配だから、と軽いノリで作ることになってしまったんです」
2000年に完成した共同墓は花と緑に囲まれ、一見、お墓とは思えないようなしゃれた造り。300体が納骨できるように作ったが、既に予約でいっぱいだ。現在、二十数人がここに眠り、さらに100体分の納骨スペースを拡張中という。
設立当初は40代が中心だったメンバーもいまや60代。ネットワークにはいっていても、孤独死への不安を抱く人もいるという。そんなメンバーに対して、松原さんは歯に衣着せぬ言葉で応酬する。
「死ぬときのことばかり意識しちゃってる人には、“死が趣味?”といってやりたい。家族がいてもいなくても、みんないつかひとりで死ぬんですよ。だから、それまでどう楽しく、いきいきと生きるかがいちばん大切。とにかく、人とのかかわりは欠かさないこと。人とかかわっていないと、心が冷たくなってしまいますよ」
※女性セブン2012年5月3日号