地方の財政再建のためには、民間よりはるかに高い地方公務員の高額人件費のカットは必須だが、全国各地で、給与削減条例案に地方議員たちが猛反発する事例が相次いでいる。
この3月、みんなの党横浜市議団は、横浜市の市会議員の議員報酬削減に加え、市職員の給与を約5~10%削減する人件費カット条例案を市議会に提出した。
それに先立つ2月29日、国会では、「国家公務員給与削減特例法」が参院で可決され、同法に絡めて「地方公務員も自主的かつ適切な対応を期待する」旨の通知が各自治体に出された。
つまり政府民主党は、地方でも公務員の給与カットを実施せよと通知したのだ。
「国家公務員の人件費削減は三党合意で可決されたので、民主も自民も受け入れてくれると思っていました。これが通れば、私たちの試算では約90億円を捻出でき、市債発行の増加にストップがかけられる」(みんなの党の伊藤大貴・横浜市議)
ところが、3月23日の本会議で、民主、自民、公明、共産の「全議員」による反対で条例案は否決された。
「市の財政状況を考えれば今こそやるべき時期なのに、『時期尚早』『国と地方は別』といった反対意見が出ました。民主も自民も、国と地方でやっていることが違うのはおかしい」(伊藤市議)
この条例案は議員の報酬削減も含んでいたが、職員だけの給与カットでも、ほとんどが否決されている。
茨城県かすみがうら市では、昨年12月に宮嶋光昭・市長が、市職員の給与月額を5%引き下げる条例案を提出したが、市議会総務委員会に「全会一致」で否決された。今年3月の定例会でも再度否決されたので、宮嶋市長は臨時会を招集。前出の特例法成立を受けて、市職員の給与を4月から2年間、平均7.57%引き下げる条例案を提出したが、これも圧倒的反対多数で否決されてしまった。
宮嶋市長は市議会をリコールする方針を打ち出した。「ブログ市長」の行革案に、議会と役所が組んで猛反発した鹿児島県の阿久根市と似た事態になっている。反対した共産党の佐藤文雄・市議は、理由をこう語る。
「地方公務員の給与削減はデフレを促進し、地方経済に悪影響を与えるので、安易な削減には反対です。基本的に職員給与の引き下げは職員組合との交渉を経て、妥結してから議会にはかりますが、それをすっとばすというのは、独善的な判断といわざるを得ません」
しかし、公務員の給与を少々下げただけでデフレが起きるなら、「公務員が多すぎる」「公務員だけ収入が高すぎる」という証拠だ。
※週刊ポスト2012年4月27日号