大人力コラムニスト・石原壮一郎氏の「ニュースから学ぶ大人力」。今回は石原慎太郎・東京都知事の「尖閣諸島を都が買う」という発言から、「とりあえず言ってみる」ことの大切さを学びます。
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あの人騒がせな閣下が、またやってくれました。東京都知事の石原慎太郎氏が、4月16日、訪問中のワシントンで講演して「東京都が尖閣諸島を買う!」とぶち上げたのです。所有者とは、すでに基本的な合意に達しているとか。「東京が尖閣を守る。どこの国が嫌がろうと、日本人が日本の国土を守る」と、相変わらず意気軒高です。
尖閣諸島は日本政府は「もちろん日本の領土です」という立場ですが、中国や台湾も領有権を主張していて、騒動や議論を巻き起こし続けてきました。ま、それぞれに言い分はあるのでしょう。これまで日本政府は、一貫して「面倒だから曖昧にしておこう」という姿勢でしたが、今回の石原知事の発言をきっかけに、野田総理が「国が購入を検討してもいい」みたいなことを言い出すなど、いきなりバタバタとあわてています。
きっと石原知事としても、いろんな狙いや思惑があっての発言でしょうけど、そのあたりはさておき、わかりやすく見せつけてくれたのが「とりあえず言ってみる」ことの大切さ。石原知事は自分のお金で買うと言ったわけではなく、いわば都民の税金という人の褌を勝手に借りてケンカを買い、威勢の良さを示したという図式です。
そもそも東京都がそういうことにしゃしゃり出ていいかどうかも、よくわかりません。しかし、何はさておき「オレにまかせろ!」と言い出したことで、腰が重かった国を動かしました。知事のそんなやり方は、一部には批判もありますが、それ以上に喝采を浴びています。
大人としては石原知事に学びつつ、とりあえず言ってみることで、こう着状態を打ち破ったり喝采を浴びたりしたところ。たとえば営業部の同僚が「企画部のヤツらが、営業部の仕事にあれこれ口出ししてくる」といった縄張り争いの愚痴をこぼしてきたとします。そんなときは「よし、オレにまかせろ! 営業部と企画部を合体させればすべて解決だよ」と答えましょう。
そんな力はまったくなくてもかまいません。相手は、なかなか頼もしいことを言ってくれると感心しつつ、やっぱり愚痴言ってないで自分で動かないと仕方ないなと気づいてくれるはずです。
あるいは、美乳と巨乳、お尻と太もも、微熟女と熟女など、境界線が曖昧なものは世の中にたくさんあります。酒の席で「境界線はどこだ!?」という議論になったときは、とりあえず「オレにまかせろ!」と宣言しましょう。さらに、力強い口調で「女性を100人集めてくるから、その上で議論しよう」と提案します。そんなことはできるわけないし、したところで意味はありません。しかし、夢がふくらんで楽しい気持ちにはなれます。
さあ、あなたも今日から、いろんな場面で「とりあえず言ってみる」というスタイルを心がけましょう。いつしか「ああ、またあの人か」とみんなに呆れてもらえる境地にたどり着けたら、もう怖いものはありません。まさに石原知事のように。