ミサイル発射予告で各国を散々振り回したあげく、発射は見事に失敗…相変わらずの問題児ぶりを発揮している北朝鮮。後継者の金正恩氏も父親・金正日氏のように“やりたい放題”を繰り返すのか。ミサイル発射の真意から食糧難の現状、美女軍団のいまなど、不可解な国・北朝鮮の最新事情をリポート。
ここ数年、エジプトやリビアなど中東の独裁国家は、民衆や軍の反乱によって次々と打倒された。しかし、北朝鮮内部情報誌『リムジンガン』編集長の石丸次郎さんは北朝鮮でクーデター発生の可能性は低いという。
「北朝鮮は中東以上にガチガチの監視統制国家。とくに政権幹部の動向は盗聴や監視によって見張られている。毎日の行動は、15分刻みで報告しなければなりません。軍の将校も厳しく相互監視されており、『中東の春』のような反政府行動ができるとは当面、考えられない」
正恩体制が決まってからは、「爆風軍団」という金正恩直属の取締機関も創設された。
「爆風軍団の正式名称は『朝鮮人民軍内務軍』。謎の多い軍団ですが、警察や軍隊を取り締まる権限のある組織とみられ、金正恩の命令で動く特命チームのようです。自分だけの特命チームをつくって権力を防御するのは独裁者の常套手段です」
と話すのは韓国のインターネット新聞「デイリーNK」東京支局長の高英起さん。
市民同士でも相互監視が義務づけられている。これについて北朝鮮研究を専門とする山梨学院大学の宮塚利雄教授が語る。
「北朝鮮の市民は20世帯ほどでひとつの班をつくり、週に1度集まってお互いの生活を反省し合う『生活総和』が行われます。そこで、政治への不満を口にしようものなら、すぐに警察に通報され、強制収容所送りにされてしまうのです」
強制収容所では、1日の労働時間が15時間程度に及び、夜明けとともに肉体労働に駆り出される。食事は、トウモロコシがゆが配給されるが、ノルマを達成できた人だけ。ネズミを食べることで、ようやく生き延びられるような生活を強いられるという。
ミサイル発射、食糧難、相互監視…私たちには理解不能の恐怖政治を続けている北朝鮮だが、市民生活の間では、確実に変化も起こっている。
「1990年代に配給制度が破綻し、多くの餓死者が出てから、市民は国に頼らず自分勝手に商売をするようになりました。戦後の日本の闇市のようなものが街頭に広がり、米や野菜が売られています」(高さん)
とくに中国との国境に位置する北朝鮮北東部では、中国経由で韓国のテレビや音楽の海賊版がはいってくるという。
※女性セブン2012年4月19日号