国政を睨んだ橋下徹・大阪市長の政治改革に注目が集まっているが、霞が関と大メディアの嫌われ者であること、そして壊し屋であるこという点では小沢一郎・民主党元代表との共通点が浮かび上がる。
これまで橋下氏は「小沢先生に頑張ってもらいたい」などと、他の識者や政治家がためらう「小沢評価」を堂々と口にしてきたが、実は小沢氏も周辺に、橋下氏について「礼儀正しい人間だ」「既得権と闘う覚悟は本物だ」などと高く評価する発言をしていたという。
ただ、この壊し屋2人が接近することは、その既得権派をますます苛立たせることになる。当然といえば当然の皮肉だが、橋下氏も、小沢氏が経験してきた権力総動員のなりふり構わぬ攻撃に晒され始めた。
なんと経済産業省中枢が、7月に関西の大停電を目論んでいるという信じ難い情報を掴んだ。
「梅雨が明けて夏を迎えた時、いまの供給見通しでは確実に関西で大規模な電力不足が起きる。関西の有権者は身をもって橋下の原発再稼働反対が無責任で迷惑な主張だと知ることになり、橋下ブームは一気にしぼむだろう」(同省幹部)
言葉こそ慎重だが、大停電を「橋下のせい」と結びつける論理は恐ろしい。実際には電力供給できても、経産省と関西電力が結託すれば、停電や節電令を現実にすることはいとも簡単だ。
本誌・週刊ポストにそう語ったことを含め、経産省はこの「停電ブラフ」を隠そうとしていない。もちろんそれは橋下氏の耳にも届いており、露骨な脅しに怒り心頭に発したことは想像に難くない。ある大阪維新の会関係者は、橋下氏が原発稼働問題にここまでこだわり、ついにはこの問題で「国民が民主党政権を倒すしかない。次の総選挙で代わってもらう」と倒閣宣言までしたのは、そうした背景があったからだと見ている。
霞が関を敵に回すと、もれなく大マスコミの攻撃もついてくる、という構図もまた小沢氏のケースと同じ。
橋下氏は選挙中に親族の“スキャンダル情報”を流されるというネガティブキャンペーンの洗礼を受けたが、最近になって、政界関係者や捜査当局から、
「急拡大した大阪維新の会の議員は玉石混交で疑惑の宝庫。カネや倫理上の問題が噴き出す」
と、不気味な“予言”とともに具体的なスキャンダル情報がリークされている。すでに一部メディアは、そうしたリークに乗って維新幹部らの周辺取材に着手している。
※週刊ポスト2012年5月4・11日号