国際情報

中国がインド核攻撃の範囲内に なぜか日本の報道だけが無視

 アジアの軍事バランスが大きく変化しようとしている。インドの射程5000㎞の長距離ミサイルが、中国の主要都市のほぼすべてを射程内に捉えたのだ。そして、2014年の核弾頭搭載。だが、なぜか日本の報道は、北朝鮮のミサイル発射失敗のニュースばかりだ。以下、ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

 * * *

 北朝鮮が強硬発射した長距離ミサイルが離陸後わずか数分後に爆発。世界がその失敗を大きく報じてから約一週間後の19日、今度はインドが核弾頭搭載可能な長距離ミサイルの発射実験を行い成功させた。

 ミサイルはインドが独自に開発を進めるAGNI(アグニ)シリーズの最新型で、射程5000㎞のである。今回、洋上に設定された目標物を捉えたことで実戦配備も可能になったとされ、2014年には核弾頭を搭載して配備されるという。

 このニュースはアジアの軍事バランスを大きく変化させる重要な意味を持つため、世界各国が大きく報道し、なかでもオーストラリアやシンガポールをはじめアジア各国の反応も目立ったのだが、日本ではなぜかほとんど無視された。

 現在の射程だと沖縄や九州の一部に届く程度だからという理由だけではないはずだが、北朝鮮のミサイル報道の大騒ぎと比べると首を傾げたくなる反応だ。結局、日本は軍事バランスや安全保障という観点ではこうした問題を捉えていないことの証左なのだろう。

 いずにせよAGNI5の成功の重要性は、何といっても中国に対する牽制という点にある。というのもAGNI5によって攻撃できる範囲が広がったことで、中国の主要都市のほぼすべてがインドからの核攻撃可能範囲に含まれたからだ。事実、今回の実験成功に最も敏感に反応したのも中国である。

 実験成功を受け中国政府は、外交部報道官の「インドは競争相手ではない」というコメントを出しただけで表面上落ち着いた反応を見せたのだったが、反面、メディアは警戒感を剥き出しにした。

 緒についたばかりのインドの核ミサイル戦力について、「中国に比べて大きく劣る」といった論評や、「陸海空の三方面からの攻撃を分析すると、海上からの攻撃能力で大きく見劣りがする」といった戦力比較から、インド政府の意図をけん制して、「インドが西側社会と連携して中国の成長を抑えつけようとする意図を持つのだとすれば、将来、大きな代償を支払うことになるだろう」と大袈裟な言葉で警告する言論も見つかった。

 中国は明らかにこのAGNI5の実験成功の向こうに、アジアの新しい軍事バランスを見始めているのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト