『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子…など、様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を展開する。本サイトでは4月20日に配信された12号よりから「勝谷誠彦の今週のオピニオン」を公開する。
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中国は外交での失態である「外患」に加え、大きな「内憂」も抱えることになった。言うまでもなく重慶市のトップであり、「次の次の指導者」をうかがう地位にあった薄煕来の不祥事だ。妻の谷開来はイギリス人の知人の殺害容疑で取り調べられている。(薄煕来は3月16日に重慶市市委書記職を解任)
共産党中央に近いメディアでは薄本人が死刑になるのではないかということまで書き始めた。言うまでもなく、中国のメディアは党の中央宣伝部のコントロール下にある。これほどの要人の運命について迂闊なことは書けるわけがなく、指導部の方針がそちらに向かっていると考えざるを得ない。
薄煕来は革命歌を歌う運動を推進するなど、復古派だった。「国家資本主義」の道を爆走する現指導部とは相いれず、利権を手離したがらない軍に近かった。改革開放派と共産主義護持派のせめぎ合いが、とうとう要人の粛清にまで及んだわけで、かなり深刻な事態と言っていい。そしてこうした「内憂」による国家の体力の低下が、各国の攻勢という「外患」を呼び込んでいると見ていいだろう。
しかし、実のところ中国の指導部がもっとも怯えている「内憂」はまだ起きていないのである。不動産バブルの破裂にともなう、経済の破綻だ。
自由主義諸国と違い「八百長資本主義」を押し進めている中国では、権力抗争はそのまま経済の動揺に直結するのである。