中国の胡錦濤主席や温家宝首相ら党・政府要人の警備を担当する、中国のSP(シークレット・サービス)部門、中国共産党中央警衛局の副局長が3月、突然解任された。解任理由は、元重慶市トップで全職務を解任された薄熙来氏に最高指導部の動静情勢をリークしたという信じがたい内容だった。
党中央警衛局は元来、中国人民解放軍の組織の一部で、エリート中のエリートが配属される。かつて、軍事クーデターで毛沢東主席の命を狙った、当時のナンバー2だった林彪党副主席らのグループの追撃を振り払って、毛主席を死守したことで知られ、「中国最強の軍事集団」と呼ばれる。
ところが、この4月、李潤田・副局長が解任されたことが明らかになった。李副局長は今年3月5日から2週間、北京で開かれていた全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で、胡主席や温首相ら最高指導部の警備を担当していたが、全人代終了後、姿を見せなくなっていた。これと時を同じくして、全人代終了翌日の3月15日に薄熙来氏の重慶市書記解任も発表されており、両者は関連があるとの観測が流れていた。
香港メディアによると、李副局長は党最高指導部の執務室や電話などに盗聴器を仕掛けて、極秘情報を集め、それを薄氏に提供し、その見返りに相当額の報酬を得ていたという。
薄氏は日ごろから胡主席や温首相に関する職務上の情報ばかりでなく、家族や親族らの非公開情報を集め、自らの政治的立場の強化に役立てようとしていたとみられる。
しかし、胡主席らは早い段階で、盗聴器を発見し、内部調査の結果、李副局長の仕業であり、薄氏との関連を突き止めたと香港メディアは伝えている。
薄氏の事件は妻の谷開来氏が殺人容疑で逮捕されたほか、薄氏の腐敗容疑など逮捕者も多数出ており、中国の政界はおろか、財界にも拡大の様相を呈しているが、今回の盗聴事件もその一角で、中央指導部を巻き込む中国共産党政権始まって以来の大疑獄事件になりそうな雲行きだ。