日本政府の弱腰外交が中国の傍若無人な振る舞いを増長させている。西南諸島周辺では中国の艦船がわが物顔で航行。尖閣諸島海域に至っては平然と領海を侵犯して恥じるところがない。このままでは日本の領土が中国に奪われかねない状況だ。台湾出身の評論家・金美齢氏が警告する。
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台湾では1月の総統選挙で中国との結びつきを強める与党・中国国民党(国民党)の馬英九が、中国と一線を画す最大野党・民主進歩党(民進党)の蔡英文の猛追をかわして再選を決めた。
私は全力で蔡英文を応援しただけに残念でならない。しかし前回(2008年)の総統選挙で民進党候補は馬英九に200万票以上の大差をつけられたが、今回は約80万票差に縮まった。「このまま馬英九に続けさせたら、台湾は中国の一部になってしまう」と危惧している台湾人が増えているのは明らかである。
とはいえ、後半の4年間(総統の任期は2期)を馬英九にやらせると、台湾はますます中国というブラックホールに引き寄せられていくのは間違いない。台湾が中国に呑み込まれると直接影響を受けるのは日本である。台湾という太平洋における自由主義の橋頭堡がなくなれば、中国の覇権主義の脅威が正面から日本に迫ってくるからだ。中国にとって台湾の次の標的は間違いなく尖閣、沖縄、すなわち日本なのである。
※SAPIO2012年5月9・16日号