ダルビッシュ有投手のメジャーでの活躍が話題になる中、ひっそりと再起を期す選手がいる。37歳でレイズとマイナー契約を結んだ松井秀喜選手だ。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏は「松井を全力で絶賛して自分を励ませ」と説く。
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去年、アスレチックスからFAとなり、所属先が決まらないまま2月にアメリカに渡った松井秀喜選手が、レイズとマイナー契約を結ぶことが、ほぼ決定しました。しかし、あくまでマイナー契約で最初は3Aからのスタート。チーム内の厳しい競争を勝ち抜かなければ、メジャーの舞台に上がることはできません。レイズは外野陣が充実していて、たとえ昇格しても定位置の確保は難しいとも言われています。
ここ数年はケガに悩まされてきましたが、松井の日米での実績がいかにスゴイかは、今さら説明の必要はありません。日本球界からの熱いラブコールを断わってあくまでアメリカ大リーグにこだわり、けっして若くない37歳でマイナーからの再出発に挑む――。中年世代としては、そんな松井を全力で絶賛し、心から応援せずにはいられません。
ま、そんな気持ちが海の向こうの松井に届くかどうかはさておき、松井を応援することで、ありがたいことに自分自身も応援することができます。「かつてはそれなりに派手に活躍したけど、今は思うように結果が出せていない」というのは、多くの中年が直面している状況ではないでしょうか。ダルビッシュのような生きのいい若手が登場して、みんなの注目はそっちにばかり集まり、自分には小さくて地味な仕事しか回ってこない……。
「もう俺の時代は終わった」と捨て鉢な気持ちにもなりがちですが、そんなときこそ松井に助けてもらいましょう。「なんでこんなことを俺が」と言いたくなる仕事やポストを振られたら、「よし、松井のようにマイナーからやり直しだ!」と自分を励ますもよし、「おっ、なんか今の俺って、松井みたいだな」と勝手に重ね合わせて悦に入るもよし。今後、松井がメジャーに昇格すれば「俺もまだまだやれる」と思えるし、仮に不本意な結果になったとしても「松井のカタキはオレが打つ!」と自分を鼓舞することができます。
自分がリストラされたり友だちがリストラされたりしたときも、「松井だってあの年齢で再出発して、もうひと花咲かせようとしているんだから」というセリフを自分や相手に贈りましょう。年収が大きく減ったとしても、松井の年棒ほど極端ではないはずです。
さらに、松井を通して、今後の日本のあり方を語ってしまうのも一興。酒の席で「日本は松井に学ぶべきだ。過去の栄光をいったん捨ててイチからやり直す気になってこそ、また活路が見い出せる!」といったようなことを熱く語れば、広い視野と深い見識を持っているように見えます。冷静に考えると意味不明な上に何も言っていませんが、スナックやキャバクラで野球に疎い女の子に言う分には、とくに問題はありません。
こんなにいろんな恩恵を与えてくれるなんて、野球って本当に素晴らしいですね。さらにいろんな恩恵を授かれるように、松井の復活とさらなる活躍を祈りましょう。