ビジネス

「会社員の妻は年金優遇されている」の主張 実は嘘との指摘

 3月30日、政府が消費増税法案を閣議決定し、今国会中の成立を目指していることはよく知られているが、同時に「年金機能強化法案」も国会提出されていることはあまり知られていない。

 そこで狙われているのはサラリーマンの妻だ。

「強化法案」には、週20時間以上働いている年収94万円以上のパート労働者も厚生年金に加入して保険料を支払うことが盛り込まれた。新たに約45万人が対象になる見込みで、その半数は夫の年金に加入している主婦である。

 これまでサラリーマンの妻は「第3号被保険者制度」によって、週30時間未満の就労で年収130万円未満ならば保険料を納めなくても国民年金を受給することができた。そんなパート主婦が今後、年約9万6000円(月約8000円)の保険料を払わなければならなくなるのである。

 年金官僚の発想の根底には「いずれ第3号制度をなくしたい」という思惑がある。だから、事あるごとに「これはサラリーマンの妻だけを優遇する制度で不公平」という説明を繰り返してきた。その論理を刷り込まれた小宮山洋子・厚労相は第3号制度を「本当におかしな仕組み」と批判し、パート労働者にも厚生年金を適用することを主張してきた。最初からターゲットは「サラリーマンの妻」だったのである。

 大新聞・テレビも「第3号はズルイ」と繰り返す。だから、今まで年収130万円未満に抑えながら、パート収入で家計を支えてきた妻のいるサラリーマン家庭では「保険料を払うことになっても仕方がない」と諦めてしまっているようだ。

 実はこれはウソである。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が説明する。

「1986年に第3号制度が導入された際、給付と負担が釣り合うように再計算が行なわれ、サラリーマンの支払う厚生年金の保険料率は10.6%から12.4%に一気に引き上げられました。保険料を払っていない妻が受け取ることになる年金分は、夫の保険料を値上げすることで補ったのです」

 つまり、サラリーマンの妻の保険料は「タダ」ではなく、その分をすでにサラリーマンの夫が負担しているのである。だから、第3号制度は「不公平」ではない。堂々と年金を受け取る権利がある。

 だが、年金官僚は“国民はもうそんな古いことは覚えていない”とタカをくくって、サラリーマン家庭から保険料を「二重取り」しようとしている。もし第3号制度をなくすというなら、今のサラリーマンの保険料を引き下げなければ辻褄が合わないのだ。

※週刊ポスト2012年5月4・11日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン