厚生年金の未加入問題は深刻だ。厚生年金に加入せず、国に保険料を納めていない事業所は全国で87万社。その徴収漏れ額はざっと10兆円に上ると推計されている。
「法律上は必ず加入しなければならないわけですから、黙認してきた厚労省は怠慢です。ようやく厚労省は加入指導に応じない事業所の名前を公表する方針を打ち出しましたが、それで加入逃れが激減するとは思えません」(社会保険労務士・北村庄吾氏)
有効な解決策ははっきりしている。民主党が掲げる「歳入庁」の創設である。
民主党の勉強会で歳入庁の重要性を説いてきた元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授が語る。
「旧社会保険庁(現・日本年金機構)と国税庁を統合して歳入庁を作れば、税金だけを納めて保険料は払わないということはできなくなりますから、保険料徴収漏れを一気に解決できます。加入逃れを防げるだけではなく、野田政権が社会保障財源のためといっている増税がなくても10兆円の社会保障財源を確保することもできるのです」
だが、歳入庁設置は進んでいない。財務省が絶対反対の立場を取り、設置を阻んでいるからだ。
「巨大な税務調査権を持つ国税庁は、財務省の『裏権力』の源です。これまで国税庁の幹部は財務省のキャリアで占められ、政治家でも民間人でも、財務省の政策に反対する人は税務調査という伝家の宝刀で恫喝されてきました。歳入庁創設はその権力を奪うことになる。だから絶対に阻止したいのです」(高橋氏)
国民の老後より役人の利権が優先されているのだ。
※週刊ポスト2012年5月4・11日号