日本政府の弱腰外交が中国の傍若無人な振る舞いを増長させている。尖閣諸島海域では平然と領海を侵犯して恥じるところがない。橋下徹首相待望論も高まっているが、橋下氏なら中国に対して毅然とした態度をとることができるだろうか。橋下氏を直接知る評論家の金美齢氏が解説する。
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橋下氏が大阪府知事になる数年前から、私は読売テレビの番組「たかじんのそこまで言って委員会」に準レギュラーとして出演していた。彼はレギュラー出演者だったから、その人となりはだいたい分かっているつもりだ。頭は切れるし、弁は立つし、ものすごく要領がいい。番組での自らの立ち位置もよくわきまえていて、何を言えば視聴者に受けるかも承知していた。
橋下氏には現在7人の子供がいるという。
「子だくさんですってね。少子高齢化が進む日本で、社会貢献しているのね。表彰されてもいいんじゃないの」
私は本心からそう思ったので、ある時、橋下氏にそう伝えたら、照れくさそうに笑っていた。また橋下氏が知事になった後、こんな質問をぶつけてみた。
「巨額の収入を捨ててまで、どうして知事というしんどい仕事を引き受ける気になったの?」
彼は苦笑いして答えた。
「子供たちの未来のために引き受けたのですよ」
きれいごとのように聞こえるが、まんざら嘘ではないと思う。自分の7人の子供を含めて、将来を担う子供たちのために、教育を改善しなければならないと痛切に考えているからこそ、生徒や教師に君が代をきちんと歌わせるとか、日の丸に敬意を持たせようと尽力しているのだと思う。そうしたことや日頃の言動などから判断すると、橋下氏は基本的に保守主義者であり、愛国者であると私なりに理解している。
また大阪府知事から大阪市長に鞍替えしたのは、大阪市の方がより大きな権力があることが分かったからだろう。そのこと自体は「伝えたいことがあるなら出世しなさい」と折にふれて言い続けてきた私から見ると正しい行動だ。
彼は上昇志向が強い人だから、さらに上の首相を目指したとしても何の不思議もない。もっとも、まだ若いし、時間があるのだから、もう少し大阪でじっくりと政治家としての実績を積んでからの方がいいと思うのだが……。
※SAPIO2012年5月9・16日号