海外メディアが首相以外の日本の政治家の詳しい言動や、具体的な“人となり”に注目することは稀だ。まして地方自治体の首長レベルとなると、ほとんど取り上げられることはない。しかし橋下徹・大阪市長については、昨秋の大阪ダブル選挙での圧勝以降、日本の社会現象の一つとして詳報している事例がある。世界がどう報じているか、台湾の場合を紹介しよう。
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府知事時代に訪問している台湾では、比較的、橋下氏に好意的な記事が多いようだ。
たとえば、中国時報のコラム「東京風向球」(2012年2月25日)は「橋下徹、もう一つの小泉旋風の再来」と題して、小泉元首相との共通点を述べた後、その意義を報じている。
「橋下は坂本龍馬の船中八策を真似て、維新八策を主張、その中心思想は日本の再建であり、グレートリセットであり、つまりは改革で新しい社会体制を作ることだ。……破壊は容易であり、建設は難しい。しかし日本の民衆はまた改革がリスキーであることを知っている。彼らはそれでもリスクを受け入れ、新しさを求め、変化を求めている」
台湾在住ジャーナリストの分析。
「橋下氏が好意的に報じられるのは改革者のイメージが先行しているから。台湾では馬英九政権になってから保守化が進み、様々な改革が進まないことへの反動もあり、橋下氏の大胆な言動がプラスに評価されているようです」
批判記事もある。週刊誌の新新聞(12年1月11日号)のコラムでは、「橋下徹が劇薬を使う、副作用は大」という見出しで評している。
「橋下は核(原発)廃止を公約に掲げ、市民はすでに住民投票の署名を集め、廃止実現に向かっている。橋下は民主革命の発動に成功しているが、橋下の右傾思想は教育改革に及び、教師や市民の反発を招いている。橋下自身が強烈な劇薬のようなものであり、それだけ副作用も大きく、強烈な権力支配は多くの人に恐怖感さえ与えている」
※SAPIO2012年5月9・16日号