「きんは100シャア、ぎんも100シャア」。そんな名セリフで日本中を沸かせた双子の100才、きんさんぎんさん。あれから20年が経ち、ぎんさんの4人の娘たちもいまや平均年齢93才、母親譲りのご長寿だ。彼女たちに、よく働き、厳しくもあったぎんさんについて振り返ってもらった。
100才を過ぎてから、ぎんさんは、年を追うごとに元気旺盛になった。
<人間、あすんどる(遊んでる)のがいちばんいかん。とにかく、体を動かさにゃ、くさってしまうでぇ>
それが口癖だったぎんさんは、ジッとしているのが大嫌いな性格だった。
美根代さん(五女・89才):「105才まで庭の草むしりをし、四季の花々を丹精こめてつくらしたな。暇があると、せっせと自分や家族の洗濯ものをたたむ。古い毛糸をほどいて、ひ孫たちの手袋も編んだでね」
百合子さん(四女・91才):「どっちかちゅうとなまけもんの私には、おっかさんが見習うべきお手本だったわね」
一家の大黒柱を自負するぎんさんには、「わしが、この家を支えてきた」という、揺るぎない信念があった。そんなぎんさんは、普段はものやわらかな態度を大事にしたが、ここぞというときの厳しさは、亡くなる寸前まで健在だった。
美根代さんが、ちょっとしたはずみで道理に合わないようなことをいったりすると、
「おみゃあさん、おごるんでにゃあよ」
ぎんさんは、80才近くになった娘をたしなめ、美根代さんは母親の前で畳に両手をついて、「私が悪うございました」と、幾度も頭を下げて詫びないと埒があかなかった。
美根代さん「そいだである日ね、あんまりだと思うて、“おばあさん(ぎんさん)、もうええ年だで、いい加減、憎まれ口もにゃあ、ほどほどにせんとな”というただがね」
すると母・ぎんさんの口からこんな言葉が突いて出た。
<いや、ときにはな、人のいうことを聞かんほうが、ボケせんでいいと違うか>
※女性セブン2012年5月10・17日号