健康に良いイメージの「わかめ」だが、実際になにが、どう良いのか。5月5日は「わかめの日」(実は!)だ。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏が、「わかめの秘密」を語る。
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5月5日と言えば、子どもの日。端午の節句である。そしてもうひとつ、なぜかこの日に制定されている日がある。「わかめの日」である。
なぜ5月5日に、わかめなのか。日本わかめ協会によれば「新わかめの採取が一段落し、美味しい新わかめが市場に出回り、やはりこの時期に出回るタケノコとを取り合わせた季節感たっぷりの『若竹煮』のシーズン」であること。そして「印象を与えやすいよう『子どもの日』の5月5日を『わかめの日』と定めました」ということなのだ。
わかめには都市伝説めいた噂もよく聞かれる。「健康にいい」というぼんやりしたものはいい方で、「髪が生える」など明らかに見た目のイメージに左右された、まったく根拠のない噂もある。
とはいえ実際、健康にいい成分が含まれているのも事実だ。例えば、海藻にはつきものの水溶性食物繊維。ご多分に漏れずわかめにもアルギン酸という、塩分やコレステロールを体外に排出する成分が含まれていて、高血圧や動脈硬化などの成人病に効果が期待できるという。またフコイダンという食物繊維には、コレステロール値を下げ、動脈硬化を予防するという作用があるばかりか、体内に吸収される前に糖質を包み込んで排出するなどして、血糖値の急激な上昇を抑える効果も期待できる。
血糖値が急激に上がると、人間の体内ではインスリンが大量に分泌される。この状態が繰り返されると、体脂肪がたまりやすくなり、肥満や糖尿病の原因にもなり得る。食事のとき、急激な血糖値の上昇を抑えるわかめを摂取すれば、ダイエット効果も期待できるというわけだ。
実際、つい先日、ロックバンドGLAYのTERUが自らのブログで、朝食抜き生活から「とろろ豆腐にわかめを載せ、そばつゆで食べると言う、シンプルな朝食」に切り替えたところ、昨年末から約6kgの減量に成功したと明かしていた。トマトやバナナなど単品のみを食べる、「××だけダイエット」よりも、「プラスわかめダイエット」の方がはるかに現実的ということかもしれない。
国内でのわかめの一大生産地である三陸海岸。昨年は収穫が始まった直後に震災が起きた。養殖わかめや施設がすべて流されたエリアで、今年は順調な収穫が行われているという。三陸もその他の海岸でも、まさにいまがわかめ漁の最盛期だ。