タバコ1本で懲戒免職。この橋下徹市長による“厳罰”が、話題を呼んでいる。大阪市営地下鉄の駅長室で喫煙し、火災報知器を鳴らして列車を遅らせたとして、駅助役を免職にする考えを示したものだ。さすがにタバコ1本での免職は例がないが、「相当、緊張感がない。裁判闘争も辞さず」とする橋下氏。
役人との対決姿勢を明確にしている氏が首相になったら、国家公務員56万人の運命やいかに? かつて勤務先の特殊法人の公金浪費などの実態を内部告発し、その経験から公務員や天下り法人の問題を追及し続けているジャーナリストの若林亜紀氏が分析した。
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公務員改革については、橋下氏は実行できる改革方針を選択する“リアリスト”であるということです。大阪府知事時代に行なった府職員の給与カットについても、組合の代表者と徹夜で話し合って承諾を取りつけました。よく言われるような「独裁」などではなく、相手がギリギリで呑まざるを得ないような現実的な改革を突きつけて、説得するそれが彼の実像です。
そんな彼が首相になったら、大阪のケースと同様、まず天下り団体への補助金カットを断行するはずです。
国は特殊法人や独立行政法人などに事業の発注や補助金交付などで年間12兆6000億円を支出していたことが、すでに明らかになっています。これらの団体は、国家公務員の再就職先となっており、12.6兆円の多くは彼らが発注するムダで高額な公共投資に化け、天下り役職員の高給、数年の勤務で2000万~3000万円以上という法外な退職金へと消えています。
これまでの実績から考えれば、橋下氏はこの12.6兆円を3~4割カットする可能性があります。額にして約4兆~5兆円の削減。やはり全額カット、全員クビではないところが肝です。一見、生ぬるいように見えるかもしれませんが、5兆円となれば消費税2%分。かなりの成果です。
仮に全額カットをゴリ押しすれば、改革自体が頓挫しかねず、公務員のサボタージュを招きかねません。ただし、橋下氏のやり方がうまいのは、最初は「補助金全額カットも視野に入れる」「天下りした人は覚悟してほしい」などとぶち上げること。そうしておいて、3~4割カットに落とし所を持ってくれば、相手も受け入れざるを得なくなる。一方、「5兆円削減」という大きな成果があれば、国民からもコンセンサスを得られるというわけです。
※SAPIO2012年5月9・16日号