阪神・淡路大震災が起きた1995年1月。当時の神戸の人たちの多くが、地震について特別な対策をしていなかったという。『震度7が残した108の教訓』を執筆した荒尾和彦氏は、東日本大震災の被災地を訪れた。
阪神・淡路を含め、その後の大地震の教訓からか、多くの人が地震に対し何らかの備えを行っていた。そして、いざ大地震を経験して初めてわかった本当に必要だったものと足りなかったもの。現地の声を聞き、荒尾氏が意外と役に立つアイテムを教えてくれた。
【多様できるラップは緊急時の味方】
支援物資として、よく挙げられたのが、意外にも食品用ラップフィルムだった。炊き出しのご飯を受け取るときに限らず、紙皿にしいて使えば何度もその皿を使うことができ、生活用水を使わずに済む。体にまいて寒さ対策にしたり、ガーゼのように傷口に巻いて、患部を圧迫することだってできる。長さは15mほどあるので、包帯に比べて余裕をもって使えるのも魅力だ。
また、津波で水浸しになった東北の被災地では、外出の際に、靴をラップで覆ったという人もいた。2足も3足も靴を持ち出せた人はほとんどいない。多くの人が避難時に履いていた靴のみ。ひとたび泥にまみれてしまえば、それ以後も汚れた靴で生活することを強いられる。いくつもの用途に使えるラップは是非、非常持出袋に入れておきたい。
【ガムで歯磨き代わり】
被災者というのは、意外に強いもので、多くのことを我慢できるように思う。しかし、そんな被災者も歯が磨けないことについては多くの人が悩まされた。水道が使えなくなり、使えるのはわずかな水。口をゆすいで普段のように歯を磨くことは難しい。
しかし、被災者は食事も水分も最小限で口内の唾液の量が減った状態だ。口臭は通常よりも早く気になるし、どうすることもできない気持ちの悪さに襲われる。そんなときに助けてくれるのが、キシリトール系のガムだ。
ある程度歯を清潔に保つことができるし、爽快感があって気分転換にもなる。人は咀嚼すると、唾液が出て、それが口の中を殺菌してくれるというし、満腹感もわずかだが与えてくれるという。場所も取らないし、粒ガムを2、3本入れておけば、充分だろう。
【精油で気になる体臭をカバー】
使用者に出会うことはなかったが、アロマテラピーなどに使う精油が非常時に役に立つのではないかという声がある。入浴ができない避難生活では、他人だけでなく自分の体臭だって当然気になるもの。
精油はわずかな量で、においを隠すことができるし、心を落ち着ける効果もある。また、ティーツリーやユーカリ、レモングラスなどは殺菌や抗菌成分が強く、怪我をした際に傷口に塗ることで化膿を防いだり、虫さされにも使えるという。
種類によって効果はさまざまで、妊婦への使用を制限したものもあるそうなので、専門家に尋ねたうえで用意しておくといいだろう。においは髪の毛がいちばん気になるもの。精油を使えない場合は、手ぐしでいいから、髪に空気を入れて少しでも汚れを減らそう。
※女性セブン2012年5月10・17日号