いまネットでも注目を集めている“こじらせ女子”。AVライターの雨宮まみさん(35才)は、自らの“女性性”についてコンプレックスを抱き、それを乗り越えようとした半生を著書『女子をこじらせて』(ポット出版)に綴った。“こじらせ”克服のために自ら足を突っ込んだAV業界は、彼女にとってどのようなものだったのか?
――AVライターになろうと思ったきっかけは?
雨宮さん:もともと、自分自身にこじらせている自覚があって、それじゃいけないと思ったのがひとつのきっかけです。私は性経験が結構遅くて、そういう世界に憧れがあったんですね。セックスをしたいと思ってるけどなかなかできないし、する機会があってもうまくできないんじゃないかって思ったりして。自分にとってセックスは重いものだったんです。
期待も大きかったし、妄想が膨らんでいるときに男性向けの雑誌を読むと“すごく美人でしかもスタイルがいい”なんていいう男性の理想の女性が出てくる。こういう人じゃないと興奮してもらえないと洗脳されてしまって…。実際にAVにはそういう女性が出ているわけでしょ。それはもう自分の中では最高にコンプレックスを刺激される存在だったので、そこにあえて向き合っていこうと思ったんです。
――AVライターになって恋人にAV監督ばかり選んでいたそうですが、その理由は?
雨宮さん:監督さんって“いい女”の女優さんたちと常に接している人ですよね。いま振り返ってみると、そういう人たちに認められると、自分も“いい女枠”に入れてもらえた気分になれるっていうのが多分あったと思います。何か自信を持ちたかったんでしょうね。いろんな“いい女”を見てきた人が自分を選んでくれたっていうことで、劣等感を埋めるための恋愛というか。
――AV業界にはいって“こじらせ”は克服できたんですか?
雨宮さん:かなり荒療治だと思いますけど、それで自分の中で踏ん切りがついたっていうのはありますね。なれもしない自分になろうとはしなくなった。いろんなAV女優を見てきて思ったのは、みんなそれぞれの良さがあって、それをつぶす方向で努力しちゃうと何もいいことがないんですよ。
いろんな年齢、いろんなタイプのAV女優がいて、それぞれに男性のファンがついているわけだから、何が良くて何がだめだという問題じゃなくて、どんな女性にも需要があるんだってことがわかってきたんです。意外と男性の趣味は幅広いんだな、って。女性って、AVならそのトップ女優だけを見て「ああいう女じゃないとダメだめなのか」と思いがちだけど、実はそうじゃないと思いましたね。
――では、仕事を通してどういう女性がモテると思いましたか?
雨宮さん:抑圧されていない女性かな。女性はどちらかというと、もっと女性らしい方向に寄せなきゃとか、本当の自分を殺していく方向に考えがち。でも、いわゆる女らしいファッションじゃなくても、寝食を忘れるほど仕事をしたり、自分の好きなことに打ち込んでいたりする女性には、付き合ってくれる割と“いい男”がいるという感じはありますね。そういう女性は、やりたいことがはっきりしていて、あまり他人の目を気にしないタイプで、のびのびしている感じが気持ちいいし、周りも気を使わなくて済むしラクなんですよね。これは、男性は好きになるなって思いますね。
――一方で、“いまの時代、モテても恩恵はない”との考えもお持ちのようですが?
雨宮さん:恩恵がないとは思いませんけど、いまは男女共に20代後半ぐらいで結婚して、恋愛よりも早く人生のパートナーを見つけて一緒にやっていきたい、という志向が強いと感じます。特に自分より下の世代の人は、気ままに独身をやって年をとってしまった上の世代を見ていて、何の実りもない恋愛を繰り返すのって虚しいと思ってる。だから、先にこの人っていう相手を決めて、絆を作っていくほうがずっと有益だっていう堅実志向が強いと思うんです。ひとりの相手と深い関係を築いていくほうが、メリットがあるって思っている人は、男女ともに多いんじゃないでしょうか。