国内

維新の会思想反映されれば教科書から「従軍慰安婦」消えるか

 中央政界も無視できない存在となった橋下徹大阪市長。もしも将来、国政に進出し、「橋下首相」が誕生すれば、歴史教育、歴史教科書はどう変わるだろうか。高崎経済大学教授で、教育問題に取り組む日本教育再生機構理事長の八木秀次氏が論じる。

 * * *
「橋下首相」は日本の歴史教育と歴史教科書をどう変えるだろうか。

 もちろん、一朝一夕で教育委員会制度を廃止することはできないし、教科書は国定ではないので、政権の歴史観がそのまま教科書に反映されるわけではない(左翼政権の歴史観をそのまま反映させないためにも、国定であるべきではない)。だが、少なくとも目指す方向としては次のようなことが考えられる。

 まず、教育の基本として、健全な愛国心を育む。安倍内閣時代の2006年に教育基本法が改正され、「我が国と郷土を愛する」という文言が入ったが、あらためてその方向性を確認する。

 実は今年2月、私が理事長を務める日本教育再生機構が開いたシンポジウムに安倍晋三元総理と松井一郎大阪府知事に登壇していただいたのだが、その際、安倍氏は維新の会が目指す教育改革を評価し、松井氏は安倍内閣の教育基本法改正を現場に反映させるのが教育行政基本条例の目的だと語った。保守本流たる安倍氏と維新の会は思想的に気脈を通じている。

 その思想が反映されれば、教科書の記述も変わる。例えば、「従軍慰安婦」に関する記述は、今年度から使用される中学教科書からは全て消えたが、来年度から使用される高校教科書ではいくつもの社で記載され、「かりだされた」「働かされた」といった強制性を想像させる言葉が使われている。橋下政権はこうした記述がなくなることを目指す。

「南京事件」「南京(大)虐殺」については、多くの中学と高校の教科書で記述され、高校教科書の中には「約20万人を殺害」「略奪・放火や女性への暴行」といった日本軍の残虐性を強調する記述もある。こうした記述もなくなることを目指す。

 ちなみに今年2月、河村たかし名古屋市長が「南京事件」の存在を否定する発言をした時、橋下氏は、「歴史に関する知見や外交関係を踏まえて発言するべきだ」という趣旨のコメントをした。これを河村氏への批判と解釈するメディアもあるが、橋下氏は「南京事件」「南京(大)虐殺」の存在を認めたわけではない。一地方首長が発言することの損得を合理的に判断した、というのが私の解釈だ。

 この他、「沖縄集団自決」「A級戦犯」など、戦前日本の「負の側面」を誇張、捏造した記述についても再考する。

 その一方、彼の過去のツイッター発言に見るように、戦前日本の「正の側面」について記述することも目指す。(そのツイッター発言とは、大阪府知事時代の2011年6月にインドネシアを訪問した時、その独立に果たした日本の貢献を感謝されるなど、想像以上の親日感情を示された。

 この体験を受けて当時のツイッターに次のように書いている。「僕の世代が受けてきた教育は、こういう事実を全て捨象した極めて一面的な歴史評価だ」「第二次世界大戦について過ちを反省すべきところは反省する。しかし、評価されるべきところはしっかりと評価する。次世代の日本の子どもたちには、しっかりとした教育がなされるべきだ」)

 具体的に言えば、明治以降の日本が果たしたアジアの解放、発展への貢献である。例えば日本統治時代の朝鮮半島に鉄道を始めとする重要なインフラが敷かれ、「漢江の奇跡」と呼ばれる韓国の経済成長を日本からの巨額の円借款が支えた事実などを正当に評価する記述に変える。

※SAPIO2012年5月9・16日号

関連記事

トピックス

ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン