政府と大マスコミの間でやり取りされるのは、何も情報だけではない。新聞・テレビにとって、政府は大事な「広告主」なのだ。各省庁が新聞、テレビなどに出稿する政府広報は、これまで全体像や詳細を知ることができなかった。そこで、内閣府ほか計50官庁に対し、2009~10年度の2年間にわたる、大新聞、テレビ局に対する広告の支出状況を情報公開請求した。全国紙5紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)とブロック紙(北海道、河北新報、東京、新潟日報、中日、神戸、中国、西日本)、テレビは在京キー局に限って請求したが、そこで開示された文書は、A4判用紙にして2800枚以上に上る(一部、ラジオや雑誌、インターネットも含む)。
その結果、2年間で総額約155億円もの広告費が、それら大マスコミに流れていることが判明した。
気づく人は少ないだろうが、新聞朝刊の一面には数日に一度、小さい囲みに入った「政府広報」マークの広告が掲載されている。これが「突出し広告」である。文字数が限られるため、「アナログテレビ放送は一年後には見られません!」(2010年7月)と地デジ難民を突き放したり、「世論の力で北方領土返還を実現させましょう!」(2010年8月)と政府の難題を国民に押しつけたりといった投げやりな文言が目立つ。
多くの国民は気づきもしない広告だが、金額は大きい。2009年度の契約は、読売1億6519万円(一面、年間102回掲載)、朝日1億3650万円(同103回)、毎日7244万円(同102回)、産経5667万円(社会面、103回)、日経3043万円(一面、51回)。これらはすべて広告代理店を通しているので、何割かは代理店の取り分になるとしても、新聞社にとって大きな収益になっていることは間違いない(新聞各社とも金額の割合等、取引の詳細については公表していない)。
●レポート/佐々木奎一(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2012年5月18日号