大阪市の橋下徹市長は4月から、警察官OBや元ケースワーカーらによる生活保護の「不正受給調査専任チーム」を市内24区すべてに配置した。いわば「生活保護Gメン」である。特に受給者の多い西成区と浪速区では、他区に先駆けて昨年11月にチームが発足しており、西成区では2チーム6人が“捜査”に当たっている。
かつて西成区の日雇い労働者の街であるあいりん地区で生活をしていた経験のある男性はこう話した。
「甘すぎる生活保護が、人々の労働意欲を削いでいるのは事実です。炊き出しに並んでいる人のほとんどは生活保護受給者。必要としている人に保護費が行き渡らないうえに、安い給料ながら真面目に働いている人がバカを見るという現状がある。生活保護制度は国全体で考えていくべき問題だと思う」
大阪市に限らず、全国の自治体で生活保護費が財政を圧迫していることは疑いがない。厚労省によれば、2010年度の生活保護費は総額3兆3300億円。受給者は戦後の混乱期の1951年度をも上回る209万人に上る。不正受給は0.4%とそれほど多くはないが、それでも2010年度は128億円と過去最高を更新し、増加の一途を辿っている。
弱者への配慮、支援は政治の重大な役割である。が、その陰で、「もらい得」が当たり前となり、さらにそれを掠め取るビジネスが横行している現状が“必要悪”として放置されてきたのも事実だろう。
国全体が生活保護の問題に頭を悩ませる中、橋下氏はこの政治課題にどう折り合いをつけるのか。西成を騒然とさせる「Gメン設置」の成果に、全国の注目が集まっている。
※週刊ポスト2012年5月18日号