関越道で起きた死亡事故をきっかけに、高速バスの安全性が問われているが、そもそも、どうして高速バスで危ない運転が横行しているのか。
背景にあるのは、2000年に行われた道路運送法の改正だ。それまで、バスの運行は国土交通省が監督する免許制だった。バス会社は経路、ダイヤなどが同省により厳しくチェックされる一方、新規バスの参入は制限されていた。
しかし、2000年の法律改正で、経路、ダイヤなどを同省に届け出なくても、一定の要件さえ満たせば、バス事業への参入ができるように。この規制緩和により、バス会社は、1999年度の2336社から2009年には2倍弱の4372社になった。
とりわけ旅行代理店がツアーを企画、バス会社が運行するという格安の高速ツアーバスが激増。例えば、東京~大阪間は新幹線なら往復3万円近くかかる。だが、高速バスならば往復1万円程度が相場。安いバスでは往復5000円台のチケットも存在している。
しかし、低価格にこだわれば、しわ寄せがくる。大阪府にある長距離バス会社の社長が苦しい台所事情を話す。
「3年ほど前は、1回東京まで往復すれば、旅行会社から30万円が振り込まれました。しかし、いまは15万円。バスの償却費、燃料代、高速料金、そして運転手の人件費などをさっ引くと、利益はほとんど残らない。
当初は運転手2人体制だったけれど、旅行会社から“2人もいらへんやろ”といわれ、1人に減らされました。運転手が増えれば、バスの座席が減り、ホテル代もかかる。そのコストは出せないというんです。無理な運行計画だと思っていても、断れば仕事を他社に奪われてしまう。請け負わざるを得ないんです」
※女性セブン2012年5月24日号