各省庁が新聞、テレビなどに出稿する政府広報は、これまで全体像や詳細を知ることができなかった。そこで、内閣府ほか計50官庁に対し、2009~10年度の2年間にわたる、大新聞、テレビ局に対する広告の支出状況を本誌は情報公開請求した。
全国紙5紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)とブロック紙(北海道、河北新報、東京、新潟日報、中日、神戸、中国、西日本)、テレビは在京キー局に限って請求した。その結果、2年間で総額約155億円もの広告費が、それら大マスコミに流れていることが判明した。
そのなかでも、広告費16億3433万円を支出する総務省で特筆すべきは、なんといっても選挙広報である。なぜ新聞・テレビは政局が動くたびに「解散総選挙」を煽るのか。もしかすると、これが動機かもしれない。
政権交代のあった2009年の衆院選の際には、総務省が選挙啓発の広告を7億5000万円で代理店に委託し、新聞、テレビなどに広告を出している。全国紙には、「わたし、行きます。」という女性モデルを使った記事下広告がたった1回、掲載されたのみだが、その広告料は、読売2507万円、朝日2294万円、毎日1537万円、日経1186万円、産経630万円といずれも高額だ。同様にテレビのスポットCM(番組と番組の間に流れるCM)は、TBS2524万円、テレビ朝日2331万円、フジテレビ1870万円、日本テレビ1285万円、テレビ東京1115万円であった。
また、2010年度には参院選挙があった。そのときは日経グループの代理店(日本経済社)が1億8200万円で受注し、そこから各紙に振り分ける形を取った。
国政選挙の際は、総務省の他に各政党も広告を打つ。そうして選挙のたび、莫大なカネが大マスコミに落ちる。新聞・テレビは世論調査で盛んに解散風を煽り、「解散総選挙で民意を問え」と社説を打つが、その選挙で民意に選ばれた政権もマニフェストもすぐに叩いて、また「民意を問え」だ。なんとも不思議な報道ぶりには理由があるのだろう。
●レポート/佐々木奎一(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2012年5月18日号