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橋下徹へ財界反発少ないのは重鎮籠絡の“人たらし”術にある

 脱原発路線を鮮明にし、関西電力に対して株主提案を行なう予定の橋下徹・大阪市長。当然、推進派が多い財界から反発がありそうだが、それがそうでもないという。その理由をジャーナリストの須田慎一郎氏がレポートする。

 * * *
 本来ならば橋下市長が推し進めようとしている脱原発路線は、ある壁にぶち当たるはずなのだが、奇妙なことに今回はそれがない。

「それはつまり、いささか過激とも言える橋下市長の動きに対して、財界・経済界がほとんど反応らしい反応を示していないのです」(関西地区選出の民主党国会議員)

 電力会社は、財界サロンの中にあって中心メンバーと言うべき存在だ。加えて財界・経済界サイドは自らのビジネスへの影響もあることから電力の安定供給を図るために原発の再稼働には極めて積極的と言っていい。

 だが、その財界・経済界が、下手をすると電力の安定供給を脅かすことになる橋下市長の動きに対して、沈黙を貫いているのだ。なぜか。

「経団連を筆頭とする財界メンバーの中に、橋下シンパが少なからずいるからだ」(経団連副会長)

 今から3年前の2009年夏、こんな出来事があったという。

 経団連の定例行事となっている「夏季フォーラム」が一泊二日の日程で軽井沢のホテルで開かれ、このフォーラムに当時大阪府知事として売り出し中だった橋下氏が講師として招かれていた時のことだ。

「当初、御手洗冨士夫会長以下、経団連メンバーの橋下氏を見る目は極めて冷淡だったと言っていい。私も含めて大方の反応は、『しょせんタレントあがりの政治家』というものだった」(経団連副会長)

 だが、そうした冷ややかな空気も、冒頭に橋下氏が発した次の一言で一変したのだという。

「本来ならば私のような若輩者は、皆様のような方々を前に話をするような立場にはありませんが」

 年長者を敬う低姿勢にすっかり気をよくして、講演を終える頃には出席者のほとんどが橋下ファンになっていたのだった。加えて橋下氏は、その日の予定を変更し、軽井沢に一泊することにした。目的は、夜のパーティーに出席するためだ。

「夏季フォーラムには、経団連メンバーは原則として夫人同伴で出席する。もっとも夫人は昼間は思い思いに過ごして、顔を見せるのは夜のパーティーだけだ」(経団連副会長)

 元タレントが出席したことで、パーティーは例年以上に活況を呈すことになった。橋下氏はこれ以上ないというぐらいの笑顔で夫人達に接して、一緒に写真に納まり、おしゃべりに興じていたという。

「私の家内も大喜びで、『あなた、ちゃんと橋下さんを応援しなくちゃダメよ』と釘を刺されましたよ」(別の経団連副会長)

 世間では闘う政治家のイメージが強いが、彼の力の源泉は、重鎮を籠絡する“人たらし”にもあるようだ。

※SAPIO2012年5月9・16日号

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